6:闘技大会
「まったくもう!サリナったらどこいったのかしら」
翌日の今日、闘技大会開催日、町は今までに増して人が多くなった。
そりゃそうだろう。年に数回しか行われない闘技大会。人も集まるし、物も売れる。物を買う人がいるなら、それを狙ってならず者も現れる。
そして、今日サリナはどういうわけか朝からいなかった。あちこち探し回ったレオナだが一向に見つからない。
「まぁ、彼女が何かされるはずも無いからいっか」
結構楽天的な性格である。
そう結論付けレオナは闘技大会の行われるコロシアムへと向かった。
さてその頃サリナはすでにコロシアムへ来ていた。
目的は無論レンブラントと対決して見ようと思ったからに他ならない。
昨日レオナに黙って選手登録の手続きをしてしまったのだ。闘技大会は後2時間ほどの9時から。
腕時計を眺めてサリナはため息をついた。
「あたしと同じ顔の人間がいる……か。あんましいい気分じゃないわね」
サリナは今選手控え室にいる。控え室と言ってもコロシアムの中にある大部屋だ。すでに二十人ほどがすでにやる気まんまんで準備運動などしていたりする。
しっかし、いろんな人が来ている。
いかにも力自慢と言った男や、騎士風の男。女性も何人かいた。
「こんにちは」
「…………?」
いきなり一人の少女が話しかけてきた。
「誰?」
フードを目深にかぶっているのでかおはわからないようにはしてある。
「私今日闘技に参加するものなんですけどもぉ。一応他の方々にも挨拶だけはしておこうとおもいましてぇ」
おっとり口調の女性だ。ほんとに闘技に出る気なんだろうか。
「私今回初出場なんですよぉ。だからぁ、分からない事なんかもあるんでぇ、少しでも相手の手の内を見ておかないとぉ、負けちゃうんですよねぇ」
「……だから、あたしに何の用?」
「はぃぃ、あなた確か魔道士Aとかいう名前で登録してましたよねぇ、ほんとの名前を聞いておこうかなぁなんてぇ……」
「悪いけどパス」
「そうですかぁ?それじゃあ失礼しましたぁ」
といって、トコトコ去っていく。
――まったく十人十色だこと。
その時だ、
「まもなく開会式が行われます!参加者の皆さんは上に上がってください」
いよいよ闘技大会が、もう一人との戦いが始まる。
「まったく、どこいったのかしらサリナったら……」
レオナはサリナを探すのをあきらめ、闘技場へ来ていた。
今日は観戦しようと内外から来た人がごったがえしている。
露店が立ち並び、人々がいきかい、それは平和な町そのものだ。
レオナが闘技場の観覧席へついたときにはすでに開会式は始まっていた。
観覧席の一段上には貴賓席が設けられている。各地の大会というのもそうであるように、ここもまた貴族連中の賭けの対象になっていた。
どこの世界も、カネのある連中はなんとも言えずこんなことに金を使っている。
さて、闘技場内では選手宣誓が行われようとしていた。
それを勤めるのは、ご存知サリナ=レンブラントである。
貴賓席ヘ向かい大声で言った。
「宣誓!
我々は、日々の努力をここに表し、勝ち負けにこだわらず、
全ての気力を出し尽くし、戦い抜く事を誓います!」
ワァァァァァァアア!!
観客から惜しみない拍手を受けレンブラントは壇を後にした。
レンブラントの宣誓の後、サリナ達はまた控え室に戻され掲示板に対戦表が張り出された。
今回はAとBのブロック戦。サリナはB。レンブラントはAブロックになっていた。
決着は決勝戦になるだろう。
――ま、ウオーミングアップにはちょうどいいかな。
「わぁ、最初は魔道士Aさんかぁ。」
――!!?
振り向けばそこには、掲示板を見上げる。さっきの女!
――初めはこの人!?なんか最悪かも……。
レオナは観客席の中ほどで闘技を見ていた。今第1回戦が始まったところだ。
「おいっす!」
「どわぁぁ!?」
いきなりフードの顔が目前に現れ、レオナは跳ね上がった。
「びっくりしたぁぁ。・・・サリナ?」
「そうよ、悪いわね。またせて」
「まったじゃないわよ。どこ行ってたの?」
「ちょっと、闘技の控え室にね」
「ふ〜ん、控え室・・・。控え室!?」
今度は飲み物をこぼしてしまった。
「汚いって。それが?」
「あんた、出る気なの?」
「ま、遠まわしに言うとそうかな」
「近くてもそうでしょうが……」
呆れ顔のレオナ。
「ま、どっちにしろあのレンブラントとかいうのとは戦ってみたいから、出てみたわけよ。他の連中はカマセになってもらいましょ……。悪いけど」
そうこうしているうちに一回戦は終わった。
「で……あんたはここで何してるの?控え室にいなくてもいいの?」
「ああ、別にいいんだって。観客席から直接入っても」
「……そう。ならいいけど」
第2回戦、第3回戦と続いて終了し、今度はあたしの出番。
「がんばってよ!」
「まぁ、ほどほどにね」
あたしは観客席の一番前までいく。
『さあ、続いては、女性同士の対決だ!赤コーナー、魔道士A〜〜!!』
あたしは手すりを飛び越えて、場内に降りる。もちろんフードは取らない。
ちらっとレオナを見るとなんかずっこけてる。
『青コーナー、シルビア=ミスティーク〜〜!!』
彼女はゆっくりと門から出てきた。
「始め〜!!」
ジャーン!!
ドラがなり、第3回戦が始まった。
「で、あんたは何を見せてくれるのかしら?」
「はいぃ、では行かせて頂きますぅ。」
わざわざ一礼してから、懐を探り始める。
ゴソゴソ……。
「あれぇ、ここに入れたはずなのにぃ、……あ、あったあったぁ」
と、出したのは一本の何の変哲も無いナイフ。
「…………」
「行きますよぉ。
え〜〜い!」
と、書け声とともに彼女はナイフを投げた。
いや、正確には放ったというほうが正しいだろうか。
普通に回転しながら飛んでくる。
そして、普通に取ろうかなと思い、
「ちょっと、投げ方なってない、……!!」
何か奇妙な感じがしてマントの端を持ってそのナイフを打ち払った。
打ち払われたナイフは普通にあさっての方向に飛んでいき、
ドガアアアアァァァァン!!
地面に衝突したとたん普通じゃない爆発を起こした。
「あああああああああ!!」
突然シルビアが絶叫を上げる。
「なんてことするんですかぁぁぁぁぁ!」
無用心にずかずかと歩み寄り、
「あれは知り合いの魔道士に頼んで魔力込めてもらったナイフfなのにぃぃぃぃぃ!
どうして、よけたりするんですかぁぁぁぁ!」
「死ぬでしょうがぁぁ!」
もっともな意見だと思う、でも彼女は、
「あれは特別性なんですよ!!どうしてくれるんですかぁぁぁぁぁぁ!
高かったのにぃぃぃぃぃ!」
「じゃあ、他の使えばいいじゃないの!」
「あったら苦労しません!」
何を勝ったつもりでいるのかどうどうと断言!
「寝てろ!あんたはぁぁぁぁぁぁ!!」
ドス!!
「がふっ……!」
みぞおちに一撃を入れ、気絶させる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この後、どうしろと……?
あじけない第3回戦を勝ち、サリナは順調に駒を進めて行く。
同じようにレンブラントも駒を当然のように進めて行く。
そして、いよいよ後半戦の準決勝、
レンブラントの相手は、召喚士らしい、いきなりデーモンとトロルを数体呼び出し、レンブラントに当たらせる。
そこは慣れているレンブラントは、カイザ−ファングを使ってデーモンを葬り去り、トロルは間をすり抜けるように通り抜け召喚士を直接狙いに行き、まさか来るとは思っていなかった召喚士はそこで完全に撃ち取られてしまった。
そして、この時点で、レンブラントはサリナとの勝負が決定した。
さぁ、サリナである。
戦うのは剣士。そこそこ強いようだが、基本魔法の連発に剣士はあっけなく当たってしまった。
何の盛り上がりも無く終わってしまい、
そして、二人は同じ土を踏む事になる。
―続く―