『とある町の、へんぴな宿。薄暗い食堂の中でこれを記す』

 里中はサリナの部屋にいた。たわいも無い雑談のためだ。サリナは今席を立ち、下の食堂に飲み物を注文しに行っている。

 そこで、ふと机の上を見るとサリナの字で、

Diary with friends

 と記された本を見つけた。どうやら、日記らしい。

 里中は好奇心でそれを取ると、ページを繰って冒頭の言葉を見つけたのだ。

 

『今にして思えば、あれは運命なのだろうか。

 今いる仲間たち。あたしの得た力。全て、運命で片付けていいものなのだろうか。

 そう、あの時から……、』

 

 

 出会い

 

 

 あたしは道を歩いていた。今日も魔法の「訓練」のために通行人で、腕の立つ人に向かって挑戦状を叩きつけるのだ。

 今日は「幻影迷宮」と言う名のついた森の前で、通行人を待っていた。

 と、しばらくして、前方から人がやってくるのが見えた。

 3人組。あたしの心は躍った。3人とも戦士風の格好をしている。

 ――来た来た。さぁて、

 あたしは、隠れていた茂みから彼らの前に飛び出した。

 驚いて立ち止まる3人組。

 あたしは腰に手を当てて高らかに言い放った。

「ちょっとそこの3人組!」

 彼らは不思議そうに自分をさした。

「悪いけど一手付き合ってもらうわよ!」

 物も言わせずあたしは呪文を唱える。

 彼らは一瞬何を言っているのか分からなかったのか呆然とし、その時間であたしの呪文は出来上がった。

「ファイヤー・ボール!」

 火球は一直線に彼らへと向かい、

 づどむ!!

 直撃した。

 ――よし!今日の敵は弱かった!

 などと思っていると、

「危ないな、お前」

 後ろから、声がした。

 驚いて振り向くと先ほどの3人がぴんぴんしている。

 どうやって移動した!?

「いつの間に!?」 

「それは企業秘密だな……」

 メガネをかけた奴が言った。

「……どうする里中」

 一番背の高い男が言った。

 ――里中……。変な名前ね。

「女相手に本気になってもな」

 などと3人がなにやら相談し、こちらを向いて剣を引き抜いた。

「よし、しゃーない適当にやるか」

「ふん、あたしをなめてかかると痛い目見ることになるよ!」

 呪文を唱え、

「フリーズ・アロー!」

 冷気の矢が数発真ん中の奴に向かっていく。

 しかし、

「烈風!」

 そう叫んで、剣を一閃すると剣から発させられた風で、矢が全て散らされた。

「うわっ!?」

 風は私をも巻き込み、バランスを崩した。

 どぐぅ!

「……っ!!」

 突然誰かの攻撃を受け、あたしは気絶した。

 

 私が気が付いたのは、夕暮れ時だった。

 ――し、しまったぁぁぁぁ!このわたしが〜〜〜!!

「……れ?」

 ふと手の中を見ると、たたまれた紙があった。

「なんだろ?」

 紙を開くと、流し字で、

『サリナ様。この度あなたを気絶させ木の根元に置いていくことをお許しください……』

「何がお許しくださいよ」

『なお、我々はこの先の町で2日ほど泊まっていきますので、

 もう一度戦う気があったらかかって来い!……では』

 

ビリリリ……

 

「な・んで・す・っ・て〜〜〜〜……!」

 最後のほうはご丁寧にも太い文字で書かれていた紙を破り捨て、あたしは立ち上がって、叫んだ!

「許さん!!」

 

「ハーックション。」

 と町の飯屋で大きなクシャミをしたのは石村だ。

「ん?風邪か?」

「いや〜、違うけど」

「誰かが噂でもしてんじゃないのか?」

 実際そうだった。

 

「この町ね」

 私が町についたのは翌日の昼頃。

 あの連中、絶対ぶち倒してやるぞ……。

 と、意気込んで通りを歩いていると、

 どんっ!

「あ、すいま……、ああっ!!」

「え、……あっ!」

 なんとぶつかったのは誰あろう、あいつらだった。こんなに早く出てくるとは。

「やっと見つけたわよ!今度こそは覚悟しなさい!」

 と、突然のことに通りを歩いていた人たちがこっちに注目する。

「おいおい!何もこんな通りのど真ん中で……」

「やかましい!!メガ・ブランド!!」

 

ぐごぉぉぉぉん!!

 

『ぎおるわかうえあぁぁあ……!!』

 謎の雄たけびを上げて吹っ飛ぶ、……野次馬の人たち……あら?

 当の3人は浮遊の術で浮いている。

「こらぁ、卑怯よ!降りてきなさい」

「お前みたいに見境の無い奴とは、つきあいきれるかぁ!」

「うるさいわよ!……といいつつフレイム・アロー!!」

「この、烈風!」

 不自然な体制からも、奴は風を放ってきた。

 風が矢を吹き散らす!

 ――同じ手を食うもんですか!

 あたしは、後ろに飛んで、風を受け流し、腰の剣を引き抜く。

 呪文を唱え、解き放つ!

「チッ!」

 背の低い奴が身を引いて、光線は後ろの野次馬数人を吹き飛ばした。

「この、やるわね!」

『やってくれたなぁぁぁ……』

「え?わっ!?なんですかあなたたち!」

 横を見ると、怖い目でにじり寄ってくるおじさん、おばさん一同。

「お前は役所送りだ!」

「え?何!?わっ!やめて!なになになに!?……」

 あれやこれやと言ううちに、あたしは役人のところへと連れて行かれたのだった。

 

「ほーっほっほっほっほっほっ……!また会ったわね皆さ……!」

『おい!頼むからその笑い方だけはやめてくれ〜!!』 

「……はい」

 三度目にあいつらに出くわしたのは、4日後の今日だった。

 あのあと、こっぴどくお説教されたんだぞ。どうしてくれる!

 苛立ちまぎれに高笑いをしたら怒られた。

 チョッチ、悲しい。

「……で、今日も今日とて何の用だ?」

 メガネの里中とか言う奴が言った。

「用ですって?アンタ達、人を散々こけにしておいて用も何もあったもんじゃないわ!」

「ありゃ自業自得って言うんだ」

「シャラップ!今日であったが100年目!覚悟!」

 と言い放って、呪文を唱え始める。

 ここは広い場所だし人もいないから大技もOK。

 というわけで、

「バースト・ロンド!」

 キュドドドドドドド!!

「うわっ!」

「この!」

 3人は飛んで避け、剣を抜いた。

「しゃーない……」

「最近めぼしい相手もいないし……」

「相手してやるか」

 ムカッ!!

 こ、こひつら、完全にあたしをコケにしてる。

 やっぱり許さ〜〜ん!!

 

「いくわよ!フリーズアロー!」

「ウィンドウォール!!」

 あたしの周りを氷の矢が取り巻きその周囲を風が舞った!

グォォォォォォォォ〜!

「ひゃぁぁぁぁぁ!?」

 強風に巻かれて、動きが鈍った。

 強風が解けた直後、

「ディルブランド!!」

 ばごぉぉぉぉん!

 地面が吹き上がり、あたしは宙に飛ばされた。

「ボム・スプリッド!!」

 とどめ、と言わんばかりの一撃にあたしは吹っ飛ばされ地面を転がる。

 そして、……あたしが見たのは3人が近づいて来て、あたしは気絶してしまった。

 

「……う……ううん」

 あたしはゆっくりと目を開けた。

 どうやら寝袋の中らしい。

 まだ生きてるみたいだ。焦点が合うと目の前では3人が焚き火をしていた。

 と、里中って人が、こっちに気づいた。

「お、目さめたか?」

「………………」

「まったく、どこまでも追っかけまわしてくるなよな」

 背の低い一人が言った。

「まっ、傷も治しておいたしなんか食べるなら食べてねな」

 と、パンをこっちに差し出す。

「……いい」

 ……と言うのが精一杯。

 またあたしは横になり、彼らに背を向ける。

 なぜだか安心感があって、寝につくのは早かった。

 

 ガチャガチャと音がする。

「ううん、ん?」

 寝袋から這い出ると、もう朝だった。

 近くでは3人組が荷物をまとめている。

 ふと、目を落とすと、パンと牛乳が。

「……よっと、ん、あ、起きたのか?」

 あっ、気づかれた。 

「それじゃあ、俺たちはこれで、」

 背の高いメガネをかけていない人が言った。

「その寝袋はやるよ。じゃ」

 と、言って去って行く。

 ……ちょ……ちょっと。

 あたふたと起きだして、パンを牛乳で口に流し込み、マントを羽織って金具をし、寝袋を丸めて(結構小さくなってかばんに入りそう)、慌てて後を追った。

 なんでって?

 なんでだろう?

 

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 ここまで読んだとき、サリナが帰ってきた。

 帰ってくるなり俺の見ている日記に気づき、真っ赤になりながら奪い取った。

 次には両手振り上げて暴れたもんだから、俺は早々に退散させてもらった。

 まだ続きらしきものがあった。今度覗いてやれ。

 と思って、俺は部屋へと戻った。

 懐かしい感覚を胸に抱きながら……。

 

 

 

 

 Diary with Friends

 To be continued