Diary
 

 

 

 

アイリスの日記より
 

 

 

 

 


*前置き

 

 日記にこんなことを書くのって私ぐらいではないか、とつくづく思う時がある。

 あたしがまだ、連邦の重役の娘で、SPたちに囲まれた生活を送っていたときのこと、運命的な出会いがあった。

 あまりにも突然で、あまりにも突飛で、とにかく信じられなかった。

 

 

  1・出会い

 

 あたし達は追われていた。護衛艦隊もすでに4つまでが落とされた。いかんせん、あたし達の乗っていた船が1年戦争時代の旧式の「サラミス」と「トロイホース」だったのだから無理も無いのだが。

 絶望的な混戦の続く中、あたしは意を決して「RGM−79・ジム」に乗り込んで戦場へと出て行った。MSの扱いは、趣味で何度もシュミレーターに乗った事がある。

 しかしこのときブリッジでは別の騒ぎが持ち上がっていたのである。

 

『援護させてもらいます!後方へ下がってください。』

 通信にでたのは歳半端の子供の姿だった。

「お前たちは、・・・・何者だ!!」

「死にたいんですか!?」

 そういう通信が交わされるうちにも、彼らの戦艦「ジャンヌダルク」からはMSが出てきている。この艦も後で知ったものだ。

 出てきたのは、最新機の「Zガンダム」と「ZZガンダム」。他にも多種多様なMSが射出されてくる。彼らが「力」を使って呼び出したものだそうだ。

 さらに、「ニュータイプ」という言葉はあたしも知っている。そして、彼らの全員がそうであったのだ。

 そして、あたし自身気づいていなかった。自分も、何の力も授かっていないはずのあたしまでもニュータイプだったとは。

 

 闘いは1時間もたたずに終わった。彼らが敵艦を物の見事に撃沈して見せたからだ。

 そして、その時あたしはと言えば・・・・、うう、実は無線機が故障している欠陥機に乗っていたことに気づかず、彼らに攻撃してたんだなこれが。はは。

 いきなり頭の中に「船へ戻って」って聞こえた時は、一瞬硬直したけど。

 

 さて、助けてもらった彼らに対し、護衛艦隊の指揮官殿はといえば、当時は階級章を持っていなかった彼らをいきなり拘束しかけた。

 その時だ。あのエンゼル中将。彼らが言う「自称天使」が現れたのは。・・・・その天使、事あるごとにちょっかい出してくるらしい。

 彼は指揮官に向かって逆に怒鳴り返し、彼の任を解いてあたしを彼らに預けることとなった。「親の委任状つき」で。・・・・・・どこからとったんだ??

 とにかく、あたしは彼らとともに行動することとなった。今の仲間のことである。最も、力を授かったのはもっと後のことだ。

 

 

  2・事件発生

 

 あたし達は航海の途中、暇をもてあましていた。

 そこで暇つぶしに模擬戦をすることとなった。のはいいのだが・・・・・。

 その模擬戦の後、サリナの様子がおかしくなった。里中君と戦った後だ。

 あたし達の目的のコロニーに到着しても、サリナは依然として里中君から距離をとっていた。

 彼らの仲は少なからずとも全員が知っている。それだけにサリナの様子が気がかりでならなかった。

 そして・・・・、あんなことに・・・・!

 

 その日、当時のあたしの叔父の家であたし達は晩餐会に招待された。

「あれ・・・・?サリナは?」

 仲間のうちの石村君が言った。

「あれ・・・・、まだ来てなかったのか?」

「誰か呼んで来いよ」

「んじゃ、俺が行ってくる」

 名乗りを上げたのは他ならぬ里中君だった。

 

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 里中君が階段を上っていき、サリナの部屋の前に到着した。

「おーい、サリナ。どうした?早くしろよ」

 ドアをたたこうとしたら、そのままドアは開いた。

「・・・・?」

里中はそのまま中へと入っていく。

 

 サリナは夢を見ていた。体は小さく子供に戻っている。あたりを見渡した。

 どうやら魔導師協会の中のようだ。しかし様子がおかしい。

 サリナのほかにも多くの人がいる。一様に沈んだ表情を浮かべている。

 その時、扉が開いた。誰かが入ってくる。

 サリナの体が、恐怖感ではねた。入ってきたのは男だ。顔は影になって分からない。

 手には大振りのナイフを持っている。

そして、ゆっくりとサリナのほうへと近づいてきた。

 サリナはあとずさろうと体重を後ろにかけた。しかし、いきなりバランスが崩れて後ろに倒れてしまった。いすに座っていたことを忘れていたのだ。

 そのままサリナは後ろへと行った。顔は男から離れない。そうしないと今にも叫んでしまいそうだったから。

 すると手に何か当たった。はっ、っと顔をやる。そこにはあるはずのない拳銃が落ちていた。

 顔を男に戻すと、男は口元にニヤリと笑いを浮かべながら、ナイフをサリナに向かって差し出してきた。ゆっくりと。

「来るなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 サリナは落ちていた拳銃を拾うと叫びつつ、引き金を引いた。・・・何度も。

 

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「来るなぁぁぁぁぁぁぁ!!」

バァンバァンバァン・・・・!!

『!!!???』

 いきなり上がった叫び声と銃声。全員が一瞬何が起こったのか、判らなかった。

「何だ何だ何だ!?」

「サリナの部屋か!?」

 石村たち男仲間を先頭にあたし、マリー、おじさんと続く。

 そして、あたしたちは躊躇無く、サリナの部屋へと突入する。

『!!!??』

 全員がその場の状況を疑った。

 銃を握った焦点の合わないサリナ。そして、白煙を上げる銃。おびただしい量の血。

 そして、・・・・・その血の海に沈むように、里中君が体中を銃弾に打ち抜かれ壁にもたれていた。

「・・・・・・い、い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 後から入ってきた、マリーの絶叫が家中にこだました。

 

 

 その後、誰が連絡したのか、天使が医者の名目でやってきて里中君の緊急治療が始まった。マリーも一緒である。

 そして、1時間がたった。

「なんとか無事です。」

 その言葉を聞いたとき、はっきり言って信じられなかった。

 数発の銃弾を体に受け即死状態だったのに、この人はたったの1時間で治したというのだから。

 しかし、数秒だけ面会を許されて彼を見た時は驚いた。血色はいい。傷も縫ったのかどうしたのか、すでに出血は止まっている。

 そして、ゆっくりとした寝息を立てている。

 

 

 その後、天使はサリナの部屋へと行った。数秒後、すごい勢いでサリナが飛び出してきて里中君の部屋へと入っていった。

「・・・・・・・・・・」

「よかったですね」

「エンゼルさん、ですか。・・・ええ、とにかく治ったのはよかったですが・・・」

「まぁ、私としても彼に死なれては困りますし、それに彼女も相当覚悟していたようですよ」

 そう言って彼は私に一丁の銃を手渡した。中身は炸裂弾が一発は入っているだけだった。

「これは・・・・・!?」

「・・・・・・彼女はこれを前にして、黙していました。

・・・・それでは、私はこれで・・・」

 言って彼は家から去っていった。

 

 

 3・後日談

 

 その後、彼らの仲は元に戻った。

怪我の翌日、元気に外を出歩いていた彼を見てあたしは驚いたが、みんなは当たり前のように思っていた。

 そうそう、彼女がなぜ彼を撃ったか。

 最近になって彼女は話してくれた。

「私は、あの臨場感あるシミュレーターが怖かった。

 模擬戦といっても、あたしは彼に串刺しにされた。現実さながらに。

 機械は、あのころはチンプンカンプンだったから」

 と。

 彼の後遺症は特に問題にはならなかったので、書きはしないけど、

 ・・・・・・なんともやりきれない事件だった。

 

 

 

― アイリスの日記 終わり ―