3・調査??
「しっかし、てめぇもろくな事件に首を突っ込まねぇな」
ジェイスは資料を前にしてもくもくと読みふけっている俺の前で、片肘着いて言った。
「俺もこんなことになるとは思わなかったんだよ。それにお前も少しはどれでもいいから読んどけ、ちったぁ知識って物を頭に入れとけよ、胸ばっかりデカくしてないでよ」
ジェイスの顔が瞬時に怒りのそれへと変わる。
「クロード・・・また踏み倒されてぇのか・・・」
「いいじゃねぇか。別に、デカくて悪い訳でもなし・・・・!」
パシィ!!
すんでのところでジェイスの放ったテーブル越しの蹴りを止めた。
「チッ!」
「遊んでないで調べ物をしろよ。コムネットに関しては資料がありすぎるんだ。開発者がまだ生きてるからって、直で聞きに言っても追い返されるだけだからな」
ジェイスは足を引っ込め、
「後で3年殺しだからな・・・」
言って、資料の1枚を取った。
はっきり言って、図書館でドタバタしてる俺達はかなり睨まれている。ンなもん気にはしてないけど。
そう、ここは図書館だ。国立で蔵書量は町で一番との噂だが、言ってしまえばありすぎだ。
コムネット、通信業界でコイツに絡んでないものは無く、迷宮の呈を見せている。
何で、賞金稼ぎがこんなことをしているかと言うと、
俺は自分で言うのもなんだが、慎重派で情報第一な性格だ。
ジェイスが知った時は大笑いされたがな、……あんときゃマジで寸止めしたくなったが。
さて、話題がずれたか。
コムネット。通信業界で現在最速、というより常識はずれのスピードをしているこのシステム。
三流企業、というより下請け会社がどうやったか知らないが開発してしまったシステム。
なかなか非常識なことをしてくれると思っているのだが、どうもそれだけじゃないらしい。
前にも言ったが、ネット中に監視の目を置けるらしく、不正アクセス者は即刻、御用となるそうだ。
これをかわすソフト、アンチソフトとかいったか?それが世の中にできつつあるんだが、それをめぐって殺人事件が起きてるってんだから穏やかじゃない。
俺の手元にもそのソフトがある。殺されたやつが使っていたソフトだ。
どういうわけか連中は開発者を殺してもソフトを消去しようとしないのだ。これも謎だ。
俺の勘だが、もしかしたら、コムネット関係者もソフトをコピー持ち帰って、ヴァージョンアップの足しにしているのかもしれない。
だとしたら・・・・・、
「クロード。・・・・おい、クロード」
「・・・・・・・・ああ?」
集中していたところに声をかけられ不機嫌な声を返す。
「メシ食いに行こうぜ。そろそろ晩飯時だろ?」
「ん?」
ふと時計を見れば・・・おお、確かに5時を回っている。
「よし・・・・、行くか」
俺は資料を放るといすから立ち上がった。
さて、大衆食堂で飯をかきこんでいたとき、
「よう、クロードじゃないか。」
「ん?・・・・なんだ、お前か」
「なんだは無いだろ、なんだは・・・、せっかく会ったっていうのに」
そういって男は頭をかく。
この男、名前はライズリー。同業者だ。
中肉中背で茶のスーツを着流し、肩まで伸びた髪の毛も同じく茶。
知り合って結構立つが、こいつは嫌いだ。何が嫌いかって言うとだ、まず賞金稼ぎの癖してやってることは詐欺か、情報屋かぶれ。
一度だけ組んで仕事をしたことがあったが、コイツ、いざ銃撃戦になると安全なところに逃げて、収まってから帰ってくるということをしやがった。
あのときは本気で殴り倒して賞金首もろとも病院送りにしたっけか。
二度と顔は見たくなかったが、情報屋かぶれつってもその持ってくる情報は確かなもので、何度か顔を合わせている。
要するに、腐れ縁だ。
「さて、クロード君。君に買ってほしい情報がある。」
俺の正面に座り、ウェイトレスに酒を注文する。
「何だ?コムネット以外の情報は買わないぞ」
俺はタバコに火をつけ、灰皿を寄せる。
「そりゃいい。ちょうどそのコムネットの情報だ。」
「・・・・・聞くだけ聞いてやる」
「そうこないとな。さて、・・・殺人事件があったのは知ってるな。犯人のめぼしがついたって言ったら信じるか?」
「・・・信じたくないな。まだ3時間ちょっとしかたって無いんだぞ」
「俺だって信じたくないさ。でもな俺がこの目で見たって言ったらどうだ?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ガタン!
「ちょっと待て!!殴るのはなしだぞ!そりゃ連絡もやらなかったのは俺が悪いが、俺だって裏づけに手回すのに苦労したんだぜ。」
「ちっ・・・」
俺は胸倉をつかんだ手を離すと再び座って深くタバコを吸った。
ライズリーはスーツを直すと胸元から写真を出した。
「誰だ?」
「クレック・トンプソン。コムネット通信会社の社員だそうだ」
『はぁ!?・・・』
「ちょっと待て!コムネットの社員が直接断罪に来たって言うのか?」
同時に声を上げ、ジェイスがつなぐ。
「そういうこと。俺も知ってから驚いたね。まさか社員がやるなんてよ」
写真をまじまじと見ながらぼやくライズリー。
「どうする?*1ガサ入れに行くか?家は近いぜ」
俺はしばし考えて、
「・・・いや、無駄だな。証拠も無いのにそんなことしてみろ。こっちがお目玉だ。」
「だろうな・・・」
ライズリーはせもたれに深く座ると、
「ただの社員にしては手際がよすぎるよな〜」
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ガタガタンッ!
俺とライズリーははねるように立ち上がった。
ジェイスが驚いて、ジュースをこぼした。
「行くか?」
「いかいでか!」
俺はタバコを乱暴に消すと、帽子を取って、出口へ向かう。金はテーブルの上に置く。
――手際がよすぎるか。だとしたら・・・・。
「人の話を聞いてるのか、てめぇら!!」
ドガッ!!
『うおわぁぁぁ!』
みずっ!
ジェイスの怒りのドロップキックは俺たちをものの見事に壁に激突させたのだった。
― To be continued ―
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ちょっとあとがき
今回ある人にご指摘されたので試験的に真ん中よりの文体にしてあります。
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