「誰が女だ、この野郎!!」

 絡んできた連中の放った一言にアイツは切れた。

 いつものことだが馬鹿馬鹿しいことできれやがる。なんで聞き流せないんだかな。

 アイツは疾風迅雷の速度で間合いを詰め、お得意の格闘術で男連中を地に這わせていく。

 アイツと組んで大分たつが、戦闘の面だけで言うならば相棒としてふさわしい。しかし、問題は性格の面だった。

「ったく、ムカつく奴らだ」

 全員を地に伏せ、戻ってきて毒ついた。

「俺のどこが女だってんだ」

 よくいうぜ。人一倍デカイ胸しといてよ。

 彼女の名はジェイス、17歳。といっても自称だ。本名はリリアナ。わかったと思うが『女』だ。

 彼女はどういうわけか自分を男と言い張る。

 そのくせ、風呂だのトイレだのは女用を使うという、訳のわからん行動をする。

 俺と組む前はどこぞの不良連中の頭を張っていたらしい。

 始めてあった時、俺は彼女に殴り飛ばされた。俺は早撃ちを得意としているが、それをしのぐ勢いで一撃を当てたのだ。

そんでその後いきなり宿に押しかけてきて、仲間にしてやると言ってリーダーを気取っている。

 そういや、後で聞いた話だがあの格闘術、通信教育で習得したそうだ。どこまでもふざけてやがる。

いい加減にしろと怒鳴りたかったが、こいつを見ているとどうも気が抜けちまう。

「おいクロード。なんだ、俺の顔になんかついてるのか?」

「あぁ?なんでもねぇよ」

「おい、なんだよその口の利き方は?」

「うっせぇ、黙っとけ」

 俺は短くなったタバコを落として踏み消すと、新しいのを咥えて愛用のライターで火をつける。

「クロード。まさかお前まで、まだ俺を女だと思ってるんじゃあるまいな」

「別にぃ。それよりとっととずらからないとサツが来るぜ。行くぞ」

 そう言って俺は彼女を無視して歩き出す。アイツは後ろで怒鳴りながらもついてくる。

 そういや自己紹介をしてなかったな。

 俺はクロード=ヴァルファス。フリーの賞金稼ぎだ。

 長身と長く伸ばした茶髪にスーツが映える色男。

 ま、そんなところか。

「人の話を聞いてるのか、てめぇ!!」

 いきなり後ろからドロップキックをかましてきやがった。俺はもんどりうって倒れ、彼女に踏み付けにされる。

 唯一の悩みはこいつに四六時中踏み倒されることだ。――いい加減にしやがれ。この野郎。

 

――続くかも――

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