*吉兆か凶兆か  −プロローグー

 

 暗い部屋だった。窓も無いも無く、中央に樫の机がありその上に水晶が置かれている。

 その水晶の周りには数人の男達がいた。

 一人は水晶の前に立ち、手をかざして目を閉じている。占い師らしくフードを着ている。

 他の男達は、全員黒い服を着ていた。彼らは静かに占い師を見つめている。

 呪文らしきものが占い師の口から流れる。すると水晶がうっすらと光り出し部屋を照らす。

「見えました。」

 占い師が静かに言った。

「まもなくこの国に二人の異人が現れる……と」

「それは何者か」

 黒服の男の一人が聞いた。

「分かりませぬ。しかし、こう告げられました。

 静寂なる、白き天使。そして、輝く、黒き天使を探せと」 

「……その二人が、平和の掛け橋になると?」

「はい」

「分かった。失礼する」

 男はそういって他の男達をうながし部屋を出る。

 外は、下町らしく閑散としていた。

「どう思う。みんな」

 男は他のものに聞いた。

「分かりかねます。バルト様」

「白き天使は分かりますが、黒き天使と言うのは……堕天使の間違いでは?」 

「いや、多分堕天使ではないだろう」

 バルトと呼ばれた男は否定した。

「あの者は堕天使ならば堕天使とはっきり言う男だ。

 黒き天使、着ている服が黒いだけかもしれん・・・。とにかくこのことはあの方にも知らせねばなるまい。

 すぐに城に戻り対策を練る。お前たちも城に戻り次第、捜索隊を編成してくれ。向こうに入ることになるだろうから、小数だ。」

「承知しました」

「よし」

 そして、バルトは歩き始めた。

 ――終わらせるのだ。他力本願だったとしても、もう後には引けない。

 

 某日。シュービル国首都シュービルの下町の出来事だった。

 皮肉にも占い師の予想は当たり、二人の天使がこの地の土を踏むことになる。

 彼女らの名は、サリナ=ハイランド。そして、マリエッタ=リバーンズ。