2・魔法剣士
ヴァンパイア――アンデットに属し、最強を誇ると言われているが、サリナはそんなヴァンパイアにはあったことは無い。
それに、魔法も使えるそうだが、へっぽこな魔法しか使っているのしか見たことが無い。
基本的に紳士姿をしていると認識していたのだが、今眼前で繰り広げられる光景はそんな生易しいものじゃない。
まるで粘土で作ったかのような醜悪な風体で完全な化け物だ。
こんな連中が魔法を使うとも思えない。
とにかく、サリナの前では、ヴァンパイアが好きなようにやっている。とめなければ!
と、
「我は滅する邪悪な魍魎!!」
カッ!
いきなり酒場にフラッシュが起き、収まったときヴァンパイアの数匹が消滅していた。
そして、その中心で手をかざしている男。さきほどサリナに声をかけてきた男だ。
「この野郎!ざけてんじゃねぇぞ!!」
男はほえて、剣を抜いた。
魔力が付加してあるのか、青白い奇跡を描いた。
まず男は手近なヴァンパイアを切り倒した!
とたんにそいつは灰になり消える。
次に返す刀でいったいを葬り、また、
「我立てる聖なる槍!」
手から刃が飛んでヴァンパイアモドキを葬った。その時!
「ガァァァァァl!」
一匹が後ろから飛び上がり、男に襲いかかろうとしていた。
男は振り向き、
ドゥン!!
鈍い爆発音とともにそいつは吹っ飛び、地面にたたきつけられて灰と帰した。
もう一度、場が硬直した。
全員がこちらを、ヴァンパイアモドキを葬ったショットガンに注目していた。あたしは一瞬のラグの間にさらに2連射し、2体を葬る。
さらに肩越しに後ろの奴に一発当てたのち、言った。
「元凶が黙ってるわけにもいかないでしょ。加勢するわ」
男に言って、手近なテーブルにおいてあった、サラダ用の木製フォークを掴むと、男のすぐ脇に近づいていた奴に投げ放つ。フォークは簡単に突き刺さり、そいつを灰へと返していった。
「そうでもしてもらわないと割りが合わないな」
男も軽口をたたいてさらに2体を剣で葬る。
あたしは右手を左後ろに回してスティックを掴むと、一気に刃を具現させ切り払う!
それだけで5体を灰人に帰す。
さらに左手のショットガンでもう一体を葬り、終結した。
左手で使っていたのは*1レミントンM1100というショットガン。
そのショットガンに弾を込めなおしていると、男が声をかけてきた、というより怒鳴ってきた。
「おい!お前さっきはよくも吹っ飛ばしてくれたな」
「あんたが、あたしに声をかけるほうが悪いんでしょ?それより、あんたこそ説明してもらえない?
なんなのよこいつら!」
「ああ?知らないのかよ?ヴァンパイアだぜ。
ここいらの酒場じゃ隠れて営業してるヴァンパイアバーが多いんだ。俺はその視察員なんだよ。
それと、間違って入っちまった一般客を移動させるのもな。」
「移動させるためだからってナンパはいけないんじゃないの?」
「なんだ、ナンパって?・・・まぁ、なんでもいい。とにかく出るぞ。え〜と・・・。」
「サリナよ。あんたは?」
「・・・・あんた・・・、ちっ、俺はロック。ロック=クレイブだ。
このヘイルイースで騎士をやってる。」
「騎士?魔法使いでなくて?」
「・・・・・・・お前、常識無いのか?
魔法が使えるからこそ騎士なんだぜ。一般に魔法使いって言われる連中は国に帰依してない連中のことを言うんだ。」
「・・・・へ〜〜。」
所変われば見解も変わるが、ここは魔法が使えて国に帰依していると騎士と呼ばれるのか、ほうほう。
・・・・ま、そんなことよりそろそろだ。
あたしは弾を込め終えたショットガンを持ち直した。
そして、しばし・・・・、
『うう、うううう・・・・・・・・・』
ヴァンパイアに血を吸われたものは同じくヴァンパイアになっていく。そう教わったことがある。
その知識はこちらでも通用しそうだ。
「くそ、今夜はワインが飲めなくなるぜ」
「じゃ飲むな。
さて、久しぶりにアレ、やってみるかな」
「・・・アレ?」
「危ないからしゃがんでてよ!」
あたしは、ショットガンのトリガー部分に木の棒を通すと、上に向かって放り上げた!
一瞬でサリナの腕がぶれる。
コンマ数秒でUZIを引き抜き、まず正面の2体に向かって一発ずつ!それだけでヴァンパイアは消滅した。
次に、右手30度の方向、左手45度方向。
後ろを振り向くと同時に2体に銃撃。左90度方向の奴に打ち込むと、右手で肩越しに後ろを一撃!
右手を戻すと同時に両方向30度のヴァンパイアに一撃を与える。
そしてその場で、左への飛びまわし蹴り!
何も無い空間を蹴りが通り過ぎるかと思いきや、放り上げていたショットガンの尻を蹴り飛ばした!
ショットガンは一直線に飛んでいき、残っていたヴァンパイアの心臓部分に見事に突き立った。
しかし、それだけでは止まらず、ショットガンはトリガー部分までめり込み、
ドゥン!!
トリガー部分にかませた木片がひっかかり、トリガーが引かれ12ミリの*2ショットシェルが火を吹く!
それを心臓を貫かれた奴の後ろのちょうど起き上がろうとしている、最後の奴の頭部を粉砕した。
突き立てられた奴は射撃の衝撃をくらい、同じく灰になる。
「おし、決まった!」
ガッツポーズでサリナは声を上げた。
「・・・・・・・・・・・・嘘だ」
口をだらしなくあけ、床に伏せていたロックは情けない声を上げた。
― To be continued ―
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*1: M1100ショットガンとは長銃身で扱いやすく作られたショットガンで、オートリロード。
前後のパーツを取り替えることでポンプアクション方式のM1100Pとなる。
バイオハザード2で使われているので暇な人はチェックしてみよう。
*2: ショットシェルとはショットガン用の弾丸のこと。筒の中に火薬と小さな金属玉を入れる散弾が有名。
ただし、今回サリナが使ったのは散弾ではなく確か、ソリッドといわれる一発式のシェル。着弾と同時に破裂しダメージを与える。