ヴァンドレッド sideX
零
地球は人口増加の飽和を向かえ、地球人たちはやむなく宇宙へと移民を開始した。
移民船が宇宙へと打ち上げられ、地球から航行できるぎりぎりの位置に「ミッション」という中継基地を作る。
「ペークシス」と呼ばれる結晶鉱物を利用した「ペークシスプラグマ」という機関を利用し、様々な宙域に人々は散っていった。
そして、このペークシスは惑星に粒子として散布すると、その惑星を人間が暮らせる環境に造りかえるという力(?)があった。
しかし100年程が経過し、地球側は自分たちこそが健全たる地球人であると唱え、移民した者達を自分達のパーツのごとくみなし、無人船団を送り、それぞれの環境で育った人間達の臓器を文字通り刈って行ったのである。
これが、「刈り取り」と呼ばれる、地球の愚かな行為である。
壱
「どうでもいいけどさぁ、なんでこう釈然としない終わり方するんだろう」
「聞かないでください」
サリナの愚痴に天使は開き直った。
「んで?次あるんだろう?」
「ええ、ございますとも。
しかし、その前に!!」
天使が杖を振り上げると、
ヴワァァァァァァァァ!
辺りが光に包まれ、俺達はとんでもないところに立っていたのである。
「・・・・・・・・・・・・・」
「なんだ?これは」
「船・・・・っていうか」
「戦艦だ・・・」
そう俺達が立っていたのは巨大な戦艦のドックだった。
そして、そこに鎮座しているのは、
「ナデシコ・・・Cか」
俺はつぶやいた。
「機動戦艦ナデシコ」というアニメがある。あれに登場する最も最先端の戦艦だ。ナデシコシリーズ最新艦。
ワープに近いボソンジャンプ。そして、大出力で放つ「グラビティブラスト」。
エステバリスと呼ばれる戦闘兵器も積んでいるはずだ。
そして、そのナデシコの周りでは忙しそうに人々が働いている。
「彼らは皆この船のクルーとして乗ってもらいます」
『はぁっ!?』
「ちょっと待て!それは・・・激しくマズイんじゃないか?」
そう、いままで船に乗ってもクルーが元からいたことは無いのだ。
「大丈夫です。彼らはあなた方と同じように、魔法使いであり、技師でもある。
クルー専門の私側の人たちですよ」
その、私側と言うのが気になる。
「・・・・・・・・・よし」
「よしじゃないだろ・・・」
俺のつぶやきに答えたのは雄だ。
と、そのとき、
「ご苦労様です!」
クルーの一人がやってきて敬礼をしたのだった。
「私はクルー代表の者です。
里中大介様以下全員のモビルスーツ、装備関係の積み込みは終わりました。
エステバリス等の兵器は5体ほど積み込んであるので、言って頂ければすぐに調整ができるようになっています。」
「・・・・あ、そう。ご苦労さん」
「失礼します」
そして彼は去っていき、入れ違いにもう一人。
「報告します。
『コアファイター』、及び『コアファイターFb』の準備が整いました。
サリナ様、アイリス様、マリー様は、こちらへ。」
「コアファイターって、なんで?」
「あたし達今回3人?」
「・・・・・不安です」
「ご心配なく。今回は全員が同じワールドへ旅立ってもらいます。
合流はできるでしょう。しかし、並大抵には行きませんよ」
――並大抵には・・・か。
『面白い(じゃない)』
全員が、ほぼハモった。言って顔を見合わせた。
「よろしい。では三人はあちらから行きましょうか。
男性方はナデシコで出ていだくことになります。」
『おう!!』
「ちょっとした質問していい?」
あたしはぼやいた。
『何?』
インカム越しにアイリスが答えた。
「なんであたしだけコアファイターなの!?」
そう、後二人はコアファイターでも高機動なFbのコアファイター。武装も段違い。
『ぼやかない、ぼやかない。ミサイルあるほうがあたしはいいとおもうけどね』
「後で、文句言ってやる」
あたしは自分の中でそう決めて前を見る。
「コアファイター及びコアファイターFbエネルギー充填完了!」
「システム及び魔法変換装置異常なし!」
「コアファイター武装フルブレット!」
「バーニア異常なし!」
「コアファイター三機発進準備完了!」
「各員退避せよ!」
その声と同時にドックの扉が開いていく。
その外は、輝く壁になっていた。
・・・・・・乙なことを。
「進路クリアーいつでもどうぞ!!」
あたしは息を吸い、
「サリナ=ハイランド、コアファイター行きます!」
「アイリス=スチュワート、コアファイターFb行きます!」
「マリエッタ=リバーンズ、コアファイターFb、出ます」
三機が同時バーニアをふかし、その壁へと突っ込んでいく。
そして、いつものとおり、意識を失う。
「ナデシコC、発進準備完了しました!」
オペレーターの女の人が言った。
「よし。・・・・」
俺は艦長席でいきなり上がり気味だった。艦の指揮はこれが初めてだったからだ。
戦闘隊の指揮は取ったことはあったが・・・、
艦長席はドーム状になっていて、さまざまな情報がウィンドウになって浮かんでいる。
両手は両側の水晶球の上だ。こうして、精神をナデシコと同調させる。
「いよいよか。戦艦での初出動は」
後ろで皆が騒いでいる。
厄介ごとは俺に回しやがってからに・・・・・。まぁ恨んではいない。
「ゲートオープン!」
『ゲートオープン!』
副官が復唱し、ドックのゲートが開かれた。
その向こうは光の壁だ。
『・・・・・・・・・・』
皆が緊張する。
今回は宇宙戦が多くなることを再認識したせいだろう。
宇宙で船がやられるということは考えたくない。
『ゲートオープン!進路クリアー』
「ナデシコC、微速前進。ドックを出るぞ」
そして、ナデシコも光の壁へと向かう。
天使は展望室でそれを静かに見守っていた。
「気をつけてくださいよ」
そして、また、かれらの旅は始まる。
弐
融合海賊戦艦ニル・ヴァーナは今日も順調な航海を続けていた。
ニル・ヴァーナとは、「涅槃」と言う意味で仏教用語の一つだそうだ。
ブリッジでは、長距離センサーに切り替えられたモニターが無人の艦橋を映している
今は、全員が休憩時間なのだ。あるものはほんを読み、あるものは銃の練習、あるものはジャグジーに浸かって肌の手入れ、あるものは、・・・・
「待ってぇぇぇぇ、宇宙人さーん!」
「しつこいっての!」
追いかけっこをしている。
「宇宙人さん!いつになったらディータのお部屋に来てくれるの!?
待ってるんだよー!」
「うるせー!俺は整備で忙しいんだ!」
ディータ・リーベライ。
少年を追いかけている少女である。
女の星、メジェールの出身。
新人のパイロットだったが、とある事件をきっかけに男のヒビキ・トカイに出会って、ただいま恋愛という感情と、興味という感情の間を奔走している。
一方のヒビキ・トカイだが、男の星タラークの出身。
双方とも地球を共通の祖先に持つのだが、なぜかこのタラークとメジェールはお互いを敵として認識している。
男の星では女を「魔物」と教え、肝を食らうとまで言っている。
女の星ではまだ「男はバイキンの塊で触ると感染する」と教えている。
『プロパガンダ』と言うものだが、何故そんなことをする(している?)かは不明である。
「ヒビキ〜〜〜!」
「げっ!」
前に見えてきたのは、前の事件で64年間もコールドスリープし続けて、ニル・ヴァーナにたどり着き地球の情報を届けた、14歳のメッセンジャー、
ミスティ・コーンウェルだった。
ついでにいうならば、ヒビキはこの二人が苦手である。
ミスティはすばやくヒビキに近づくと、
「ねぇ、ミスティーの部屋に来て。お話ししよ!」
「ダメェェェェェェェェ!!」
割り込んできたのはディータである。
「宇宙人さんはディータのお部屋に来るの!」
ヒビキとの間に割って入り、ミスティーをにらむ。
「あたしがさきよ!」
「ディータが先!!」
ミスティーがヒビキに抱いている感情は、「一目惚れ」の恋である。
そのため、ヒビキはいつも二人の間で右往左往する羽目になっている。
三角関係と言えるのだが、ディータとヒビキにはわからないのだ。
恒例のにらみ合いに突入し、ヒビキがそっと抜けようとしたその時だ!
ビィーー!!ビィーー!!
船中にサイレンが鳴る。センサーが何かをキャッチしたため警報を発したのだ。
「敵か!?」
戦闘となると嬉々とするのがコイツの習性だ。
「長距離センサーに反応!距離一万五千!」
オペレーターのアマローネ・スランジーバがコンソールの表示される情報を読み上げる。
「刈り取り船か?」
「いえ、違うようです。反応は三つですが、いずれも小型の戦闘機程度です」
「あの子みたいに、流れてきたのかね。」
艦長席に座っているのはマグノ・ビバン。齢108を数える老尼僧だ。
「分かりません。どうしますか」
隣で構えている女性が聞く。
彼女はブザム・A・カレッサ。BCとも呼ばれている。艦長の地位に次ぐ副官と、参謀長を勤めているからだ。
「敵じゃないなら、助けるのが筋ってもんじゃないかい?」
「・・・分かりました。総員第三次警戒態勢!メイア聞こえるか」
「こちらメイア」
船の別の場所で答える女性がいた。
すでにパイロットスーツを着ている彼女は、メイア・ギズボーン。
戦闘隊リーダーを務めている切れ者だ。無表情な人で顔の半分を覆うアクセサリーを装着しているのが特徴である。
「漂流者だ。救出に向かうので護衛を選抜しておいてくれ」
「了解」
そういったとき、彼女のいたところにヒビキとディータが走りこんできた。
「漂流者だって?だったら救助はまかせとけ。俺がやるよ」
「ねぇリーダー。その漂流者って宇宙人かなぁ・・・」
後は・・・・、
メイアは回線を開き、呼びかける。
「ジュラ。聞こえるか」
「えぇ、何〜〜?」
モニターに出たのは頭にタオルを巻き、体をくるんだ女性だ。
彼女はジュラ・ベーシル・エルデン。ドレッドのパイロットである。
タカビーなところがあり、自慢の金髪はひざまで伸びている。そして、サーベルの使い手でもある。
「何をやっているんだ……」
「何って、お風呂よお風呂。体はいつも綺麗にしておかないとしわになっちゃうのよね」
「ジュラ、急いで着替えるんだ。出撃してもらう」
「りょう〜〜か〜い」
続いて彼女が回線を開いたのは、射撃場だ。
「バーネット。いるか?」
「今行きますよ。」
バーネット・オランジェロ。
ほぼ全員がレーザーガンを使っているのに対し、彼女は20世紀の鉛玉の銃を使うガンマニアだ。
様々なコレクションを抱え、それをいつか使えないか指折り数える奴である。(嘘嘘)
お気に入りはCz−75ハンドガン。
ついでに言うなら、ジュラとは誰もが認める仲である。
通常ドレッド隊のリーダーを務めている。
ペークシスプラグマ。要するにエンジンの役割をする結晶鉱物が前に暴走し、女と男の船をくっつけてしまい、バーネット以外の4人はその暴走に巻き込まれた。
そして、彼女らのドレッドノート(戦闘機)、及び、ヒビキの乗るヴァンガード(蛮型)は大幅な改造を受け、合体するようになってしまったのだ。
そのSPドレッドとも言うべき3機は、いつも使っている格納庫には収まらなくなってしまって、今旧艦区――船体上部の専用格納庫に納められている。
メイア達はそこにいるのである。
「距離五千まで接近しましたぁ。」
「やはり戦闘機のようですね」
「ドレッドとは違うね」
そのとき、モニターに一人の少年が映る。
「襲ってくるようだったら、逃げましょう!」
「アンタはだまっときな」
マグノが一括する。
彼はバート・ガルサス。
男の星、タラークで唯一の食料と言うべき「ペレット」を製造する「ガルサス食品」の御曹司である。
先も話したペークシスの暴走。彼はそれに生身で巻き込まれてしまい、それ以来ニル・ヴァーナの操舵室は彼しか受け入れなくなってしまったのである。
「ガスコーニュ。」
「はいよ。こっちはいつでも出られるよ」
ガスコーニュ・ラインガウ。彼女は自らを「黒子」と自称し、外野担当を率先して引き受けている。「レジ」と呼ばれるドレッドの換装部門の「店長」である。そしてデリバリーと言う補給シャトルのパイロットでもある。
「よし。ドレッドチーム発進せよ!」
「こっちも出るよ」
さーて、そのころサリナたちはというと、だ。
「うーん。」
サリナはゆっくりと目を開けた。そして、ゆっくりと伸びをする。
「やれやれ。どこの宙域にでた・・・・!?」
機能停止しているコアファイターの窓越しに写る風景。
そこには数機の戦闘機と小型のパワードスーツ。そして、回収艇らしき物が浮かんでいたのである。
「どっしぇ〜〜〜〜!!いきなり!?」
「うっそぉぉぉ・・・・・!!」
「・・・・・・・!?」
三人が同時に別々の反応をしていた。
「戦闘機内部に生命反応を確認」
「そういえば、あの子のときも来ましたよね」
オペレーターのベルヴェデール・ココが言った。
「誰がだ?」
ヴィーー!!ヴィーー!!
とたんにさっきとは違うサイレンが響く、敵だ。
「言うんじゃなかった!!」
彼女にはトラブル予知の才能でもあるのだろうか。
「デ・ジャヴってやつか。急ぐよ!」
ガスコーニュはぼやいて、コアファイターをマニュピレーターにはさむと急いで回頭する。
「全機、デリバリーを援護せよ!」
「前にも、こんなのなかったか!?」
「いやぁぁぁぁ・・・!」
一方サリナたちもあからさまな気配に感づいていた。
『サリナ。敵みたいね』
つけていたインカムからアイリスの声がする。むろん周波数はニル・ヴァーナには無いものだ。
『どうする?』
「どうするったって、これじゃあね」
サリナはコアファイターを支えているマニュピレーターを見た。
『敵と言っても彼らの敵でしょう。少なくとも私達は来たばかりですし』
「かもね。よし、二人ともいつでも全開にできる用意だけはしておいて、場合によっては共闘することになるかも」
『了解』
周波数にないと言ったが、ノイズとしては通る。
「通信電波を受信しました。しかし、周波数が合わず・・・・」
「合わない?発信元は分かるか?」
「それが、デリバリーに回収された戦闘機からです」
「何!?」
ブリッジが緊張した。
「何を伝えたって言うんだ?」
マグノはつぶやいた。
「機体の照合はできる?」
『やってる。でもすくなくともあたしの世界にはないわ。あんな綺麗なのは』
SPドレッドはどれもクリスタルパーツを使っているらしく光っている。
『天使さんに機体の情報を落としてもらいます。』
マリーが言った。
そのころ、ドレッドチームは敵と交戦していた。
キューブ型と呼ばれている物だが、形は逆ピラミッドに手足がついたようなものだ。
先の激戦以後、こいつらは確実にニル・ヴァーナの上を行こうとしていた。
今回もすさまじい加速でデリバリーに接近していく。
デリバリーの加速では逃げられない。
そして、キューブ型のレーザーが当たり、当たり所が悪かったのかマニュピレーター全部が開放されてしまったのだ。
「くっ!以前よりハードな結果だねぇ・・・!」
キューブ型はコアファイターを持ち去ろうとする・・・、が!
「戦闘機三機に高エネルギー反応!」
アマローネが叫んだ。
「ったく護衛なら護衛らしくきちんとやってよね!」
エンジンをかけ、バーニアを一気にふかす。
間一髪で、3機ともキューブ型の魔の手から逃れられた。
「アイリス。マリー。共闘になるわ!邪魔しないように数機引き付けて離れて!」
『了解!』
「嘘だろ!?」
ヒビキが驚きの声を上げた。
回収した戦闘機がいきなり起動して戦線に参加。今キューブ数機を引き付けて離れていく。
メイアはさすがに眉をひそめただけだが、なにせキューブは数が多い、なかなか思うように落とせない。
「宇宙人さーん!合体しよーー!」
言ってヴァンガードに接近するのはディータ機だ。
「うるせぇ!ひとりでやらせろ!」
手近なキューブをぶった切りヒビキは叫んだ。
「お頭、あの三機。」
「うーん。どうやら、手伝ってくれてるみたいだね。」
「動きから見て、相当手馴れたパイロットでしょう。」
「丁度いいね。パイロット不足も解消できるかもしれないねぇ」
まぁ、これは皮肉である。
そして、サリナが最後のキューブを撃墜したころには、すべてのキューブは落とされていた。
サリナは母艦に戻っていく全機体を見て、
「やっぱり行かないわけにはいかないようね」
『諸手あげて歓迎してくれるとは思わないほうがいいかもね』
『信じたほうがいいのではないですか?失礼ですよ』
「なんにせよ。いきましょ」
三機はかくて、ニル・ヴァーナへと向かったのだった。
参
キューーーン。
コアファイター3機が上部格納庫に収容される。
今、サリナが機関を停止させたところだ。
格納庫には興味のある人がごった返していた。
その中に、
「うわーーー!あの装甲でよくキューブ型とやりあえたもんねぇ」
彼女はパルフェ・バルブレア。ニル・ヴァーナのシステム技師である。メカフェチ、グリグリの丸めがねが特徴だが実際のところ、機関クルー全員がおそろいのめがねと言うのは唖然とさせられる。
他に医者のドゥエロ・マクファイル。彼はタラークの出身である。
第一等民のエリートでありパイロット候補生だったが、何もかもを予想できてしまう人生に飽きが来て、めったに表情を出さない。
しかし今は、男女共同生活という場において彼の知的好奇心は満たされっぱなしだった。
彼の隣にいる少女はパイウェイ・ウンダーベルク。
海賊マグノ一家の看護婦である。と言っても11歳だが。
「自称チェック魔」で、事件となると鼻が利くようでメモ帳とカメラは放さない。
二人は医療用具を持って来ていた。
そして、むろんことUFOマニアのディータは最前列にいる。
横にはヒビキ。その隣にはやはりと言うかミスティがいた。
ヴィーーーーーン。
三機の戦闘機のハッチが開いていく。
保安クルー達は前に出て、いざと言うときのためにリングガンやショックランサーを持っている。
ブザムも顔を見せていた。
欄干に手がかけられた。そして、
ばっ!と一気に飛び降りたのだ。
『あっ!』
着地したのはコートを片手に持ったサリナであった。
サリナが降りる横でアイリスもコアファイターから飛び降りる。
こちらはデニムの短パンに上もベストを着ている。
いつの間に着替えたのやら……。
マリーはそそくさと備え付けの梯子を使って降りてくる。
そして三人は彼女らの、ブザムの前へ。
「遠路はるばるようこそ。といいたいところだが、大変な目にあわせてしまったな」
その言葉を聴いた瞬間、三人の表情が少し変化した。
「……何か?」
「……あ、いえ」
サリナが声を発する。そう、彼女らにしてもなじみの言語だったからだ。
「まぁ、戦闘のことならお気になさらず。いつものことですから」
そういうサリナたちに視線が集まった。サリナたちの着ている服があまりにも変わっていたからだ。
まずこの船にデニム生地の服を着ている人はいない。さらにワンピースで戦闘機に乗っているマリーも不思議だ。
サリナはサリナでコートを持っている。
二人に関しては女性の服の着かたというより男性の開放的な着かたに近いだろうか。
「お頭に引き合わせる。ついてきてくれ」
「あたしらはメジェールの出でね。海賊をやってるんだ。」
マグノにサリナたちは引き合わされる。
「男達はタラーク。今のところは捕虜さ」
『捕虜??』
三人が同時に声を上げた。
「捕虜してはまた自由にやらせてるようですね」
アイリスである。
ふと、横に目をやるとモニターに一人の少年が映っていた。
バートにしてみれば、いきなりアップになったアイリスの顔に少し引いた。
「ん?」
アイリスは一瞬中の状況を把握しかね……、
「風邪引かないでね」
そういって離れた。
思わず泣きたくなるバートであった。
「あんた達の乗ってきた妙なドレッドだけれどもあれはなんだい?」
「ドレッド?ああ、コアファイターのことね」
「コア、ファイター?」
「ええ、連邦軍の開発したコア・ブロック・システムの……」
「言っても分からないと思いますけど・・・・・・」
マリーが突っ込んだ。
「そうよね……」
「連邦……?コアブロック……?」
「ところであんたたちはどこの出だい?」
「まぁ、ありていに言って地球ですけど」
ピピクッ!
一瞬、ブリッジに静寂が走る。
「……あの何か悪いこと言いました?」
興味の視線が敵意の視線に変わったことに3人は気づいた。
「……地球かい。また遠くから来たもんだね」
「まぁ、来たと言うより放り出された感じですけど」
「一つ聞かせてもらっていいかい?」
「はい。何でしょう」
「あんたら、刈り取りのお仲間かい?」
『・・・・・・・・・・・・はい?』
いきなり知らない単語が出てきた。
「刈り取り?植木屋じゃないですよあたしたち」
アイリスが言う。
「地球は刈り取りと称して我々の臓器を狙っている。さっきの奴らもそうだが、本当に知らないのか?」
「狙ってるって・・・・、何で!?」
「それも知らないのか?」
ブザムは驚くというより呆れてしまった。
サリナは息をはくと、
「あたし達の立場はっきりさせたほうがいいかもね。これは……」
「そうね。かみ合わないもの」
「何の話だ?」
「あたし達が何でここにいるかって言う話よ。
実は・・・・・・」
「信じる前に頭を疑うねぇ」
サリナの立場説明にマグノはつぶやいた。
まぁ、サリナのした話は自分たちは20世紀の地球から来た。今何年か知らないが刈り取りとは無関係、と言ったものだ。
もちろんでっちあげである。
「事実である以上訂正はしないし、疑うのは自由です。
しかし、その刈り取りとやらとは無関係なのでその辺はよろしく」
「ま、その体がつぎはぎに見えないのは確かだね。」
アイリスとマリーを見てマグノが言う。
「悪いけど、まだ全面信用はできないね。地球のことに関しちゃあキリキリしてるからねぇ」
「結構です。いきなり来て一方的に信用してもらおうとは思っていません。」
そして、呉越同舟のたびにまたも3人増えたのであった。
―To be continued―