ヴァンドレッド sideX5
十
「惑星の大気中にペークシス粒子の反応があります。地球から移民してきた惑星のようです。」
「ここも、まだ刈り取られる前のようだね」
「そのようです」
ナデシコは惑星軌道上で地表の分析を行っていた。
実際のところ、マグノ達は格納庫でポップアップウィンドウを見ているわけだが、後ろでもクルー達が押し合いながら見入っている。
「ま、なんにしてもあたし等がどうこう言っていい身分じゃないからねぇ」
すると、いきなり別のウィンドウが開いて里中が映る。
『かまわねぇよ別に。調査だろ?』
「あ、あぁ」
『よっしゃ。そっちでも揚陸部隊を編成しといてくれ。こっちも準備する』
「なかなか判る連中じゃないか」
「他にやること無かったりしてね」
ガスコーニュが長楊枝を揺らしながら言った。
「っくし……!」
シャトルの発射準備をする里中がくしゃみをした。
「風邪か?」
「いや、別に……」
さて、俺達の乗ったシャトル2機は惑星へと降下を始めた。
揚陸部隊は、俺、サリナ、アイリス、マリー、ヒビキ、ディータ、メイア、ジュラ、バーネットである。
またもブリッジに指揮官がいなくなるので、ニル・ヴァーナの面々に代行をお願いした。なお、なぜにマリーが来たかと言うと、もしもの時の医者代わりである。
シャトルが無事に着地した。下りた先はちょうど移民船が落ちていた場所だ。
移民船があったとしてもそれは百年位前の事。それなりにコケやら草やらがはびこって、かろうじて原型と残しているに過ぎない。 しかし、移民船だけあってでかい。
「うわ〜〜!すごいすごい!!」
ディータは喜びいさんでカメラのシャッターを切っている。
あたりはどうやら着陸の際こうなったのか、木々が無く円形の草原になっている。しかし、それより気になったのは、
「中に誰かいるみたいね。」
「ああ。生活くさいものもあるからな」
そうおおくはないが、生活を思わせるものがいくつか散乱している。どうやら船をそのまま住居にしている奴がいるようだ。
ギギィ……ときしみながらも扉が開く。ゆっくりと武器を構えて俺達は中に入る。俺はサリナ、アイリス、マリーに合図をする。
3人はうなずくと、アイリス、マリーは一方の通路へ走り出す。サリナは俺と共にさらにもう一方へ。
静かにかつ迅速に通路を抜けていく俺達を見ながら彼女らは、
「慣れてるのねぇ」
「見とれてないで続くぞ」
メイアの一言で同じく二班に分かれ、俺達に続く。バーネットは見張りとしてその場に残る。
部屋という部屋を覗いたが、あったのはすすけたベットに散乱したゴミなどなど。
と、
「はぁ〜〜、こいつは驚いた」
機関室に入るなり俺はつぶやく。
「何よこれ、しっかり生きてるじゃない」
ペークシスプラグマ機関、通常神経のように張り巡らされたペークシスは、新陳代謝を続ける限り半永久的にそれは機能する。
つまり、今の今まで、今日の今日まで使い続けていたから生きているのだ。
今、目の前でペークシスプラグマが静かに青緑の光をたたえていた。
パパン!!
そのとき、バーネットの物らしき銃声が轟いた。
一方、
「しっかり生きてるわねぇ。」
操縦席でアイリスは機器を調べていた。なぜかしっかりと手入れがされている。
「これで脱出する気だったんでしょう。いつか」
「夢破れたり、っていうやつか。 ん?」
ふと外に目をやると、視界の先で動くものが……、
「誰か来る。行きましょ」
「はい!」
パパン!!
そのとき、バーネットの銃声が響いた。
「どうした!?」
一足先に戻ってきた俺達。メイアがバーネットに聞く。
「誰かいる。注意して」
俺とサリナは少し出るとあたりに意識を飛ばした。いる、確かに。
「4,5人か」
「そんなところじゃない?」
「山賊って奴か」
俺達はスティックを抜く。
「おい、どうした」
メイアが入り口から声をかける。
「そこにいろ。どうやら穏やかなお客さんじゃないらしい」
そして、
ザザザザ……!!
腰まである草むらを左から右へと音が走る。
――フェイクだ!
すばやく起動したサーモセンサーで見る限りあれは石ころが草むらを飛ぶ音。
「そこっ!」
ある一点を銃弾で掃射する。
『ぎゃっ!』
命中。すると、4つの影がいっぺんにこちらへと向かってくる。銃を向ける俺達。しかし、撃つ直前それは空中へとその身を躍らせた。その背に太陽が入り、
――くっ。逆光!
サーモセンサーにとって太陽は大敵だ。そこまで考えたかは知らないが、解除した瞬間には影は目の前に迫り、
ぎりぎりで飛び込んできたマリーの放つ蹴りと、メイア達の援護射撃に撃墜された。
「すまん!」
謝りつつ俺は体勢を立て直すと、
「真空刃!」
スティックを大振りに振り回し、高速でなぎ払う。生まれでた真空が草むらの草を一瞬にして刈る。
刈られた草の下から出てきたのは、子供だった。
「はぁ……?」
「子供?」
子供はすぐに意識を取り戻し俺を見ると、慌てて腰からナイフを抜き、抜いた腕を俺に踏みつけにされる。さらに銃を鼻先に突きつけ、
「おらぁ!貴様ら動くな!」
刈られなかった草むらでなおも移動を続ける連中に言い放つ。すぐに動きが止まった。
「マリー!」
「ウェブネット!」
マリーが両手を振り上げると、張り巡らせていた極細の糸がその連中を縛り上げ拘束し、こっちに引きずり出した。
「いってぇ……、ちくしょう!」
「放せぇ!!」
「やかましぃ!!」
それぞれを殴りつける俺。
「子供に襲われるとは、……やってられないな」
「ほんと、しかも着てるものの汚いこと」
ジュラが露骨にいやみを言うと一人が、
「あんたもそんな格好じゃ、いつ襲われても文句は言えないね」
「な、なんですって!?」
「フンッ!」
ごすっ!と制裁を加えておいてから訊ねる。
「お前ら、何モンだ?」
「けっ、人に物たずねる時は自分から言うもんだろ?」
13歳くらいの子供だが、いい育ちっぷりのようだ。
「いいだろう。俺はメジェールとタラークへ航海中の船、ナデシコC戦闘隊リーダーのダイスケって者だ。
あんたは」
「てめぇ、海賊かなんかなのか!?」
別の子供が聞いた。
「そうだ。それがどうした」
メイアが毅然と答えると、
「ちぇ、同業者だったのか」
『同業者!?』
ジュラとバーネットが驚愕の声を漏らす。
「ゴッコだろ?」
「違うわぁ!俺達はれっきとした山賊団だ。お前らこそ何の理由があって俺達の基地に入ったんだ。」
「基地〜〜?これがぁ?」
と、視線を船へと動かすと、
「悪かったな。粗末な基地で」
「あ、アニキ!」
また違う奴がいた。年齢から見ると俺達と同じくらいだろう。しかも、
「ディ、ディータ!」
「うぇ〜ん。リーダー」
「あのバカ……」
そうディータが捕らえられていた。首筋に銃を突きつけられて、
「さぁ、仲間を放してもらおうか。こちらとしても無用な殺しはしたくない」
「そうだぁ!放せぇ!」
騒ぐ子供。
俺は一人の子供を踏み倒し、銃を突きつけた。
「ちょ、大介……」
「さあて、これで戦局は平行線だな」
『なっ!?』
メイア達さえ、何をしだすのか理解できなかっただろう。
「つ、貴様!この娘が死んでもいいのか!」
さらに銃を突きつける奴。
「う、う……」
泣きそうな表情のディータ。
「おいおい、5人まとめて首跳ねる所見たいのか?」
俺はさらにスティックの先に刃渡り三十センチの刃を出すと、隣の子供の首にあてがう。むろん背の部分。
と、
ゴンッ!
「あ……!」
いきなり、ディータの後ろから何かが飛来してそいつの頭を直撃した。もんどりうって倒れる男。
投げたのは潜んでいたヒビキだ。
「時間稼ぎ、ありがとよ」
「いいえ……」
言って俺は銃と剣をしまう。
「……乱暴だな。相変わらず」
メイアがジト目で突っ込む。
「う、宇宙人さ〜ん!」
ディータは愛しき宇宙人さん(ヒビキ)に駆け寄った。
「これで全員か」
「あ、アニキぃぃ!?」
「テメェら、ただじゃおかねぇぞ!」
パパパパパン!
暴れる子供たちの前に銃弾が着弾し土ぼこりが舞う。
「死にたくなかったら静かに、ね」
「あ……、あう」
サリナの剣幕に静かになる子供たち。
10分後、リーダーらしき男が目を覚ました。むろん移民船の一室で拘束状態になっている。
尋問しているのはメイア達だ。俺達は移民船の周りの調査である。
「なんだ、あんなところに町があるのか……」
林に入って数分もせずに林は切れ、その向こうは断崖絶壁。そして、その先、約1キロだろう町が見える。
「よし、あいつらの様子でも見に戻るか。」
「いい加減話したらどうだ。」
メイアの詰問にもその男は断固として口を割らなかった。
手錠をかけられ両手を吊り上げられた状態だ。日に焼けた肌は山道を行き来しているせいか傷が目立つ。細い四肢に細い指、女といってもいいくらいだ。
「お前の名前は何だ?」
さっきから聞いている質問である。それに対してこいつは知らん顔を決め込んでいる。
メイアはため息をつくと部屋を後にする。
「どう?」
部屋の前ではジュラたちが待っていた。
「ダメだ。名前まで吐こうとしない。いい根性をしている」
と、隣の部屋からバーネットが出てきた。部屋の中からは子供の怒声が響く。
「いい加減腹が立ってきたわ」
こともなげにそういった。
「変わろう。私がやってみる」
と、今度はメイアが子供の尋問に入った。
一人残されたリーダー格。メイアが出て行くと同時に口元を動かすと、なんと口の中から針金を出してきた。どさくさに紛れて含んだものらしい。
次に手首に力をいれ、足を跳ね上げ、吊るされた縄に足をかけてしまう。
足に縄を絡ませて宙吊り状態になったわけだ。手で針金を口元から取ると、器用に手錠を開錠してしまった。
床に下りると、ドアに向かって右手の壁に取り付き力を込めて押した。すると回転扉のようにクルリと回転し、向こう側の部屋へと逃げおおせた。
なんとも手馴れてずるがしこい奴である。
「バカ女!」
「ムッツリ顔!」
「アバズレ!」
子供たちから罵詈雑言がメイアに浴びせられた。
メイアは縛られている子供から距離を置いて壁にもたれ、ただただ叫ぶままにしておいた。
バーネットみたいに起伏の激しい人間になら、子供の悪口と言うものはとてつもなくムカつくものだが、メイアにとってはただの騒音にしかならない。
2分ほどガキ連中の怒鳴り声が響き、さすがに疲れて息を吐く子供。
「終わったか?終わったなら今度はこちらが発言する番だな」
「チェッ、いやみなネェチャンだなぁ」
「嫌味かどうかはさておいて、聞くことがある。答えてもらうぞ」
と、初めてメイアが子供たちの前へと歩を進めたときだ。
どぐぅっ!
「……っ!!?」
後頭部にいきなり何者かが強烈な一撃を加えた。朦朧とする意識の中、何とか振り返ったメイア。視線に入ったのは隣の部屋にいるはずのリーダー格だった。
「……な、なぜ……」
そして、メイアは力尽きた。
ドォォォォォ!!
「な、何だぁ!?」
俺達が戻ってきたとき、いきなり乗ってきたシャトルの一機が飛び立った。
「ど、どういうこと?」
シャトルは一気に加速をかけると町のほうへと飛び去っていく。
俺達が急いで移民船へ戻ると、中ではガキ連中が脱走したというじゃないか。メイアが倒されるとは思っていなかった面々は困惑していた。
すでに意識は回復し、首筋にタオルをあてがっているメイア。
「私はいい。お前達はあいつらを追ってくれ」
「しかし……」
「いいと言っている!早くしないと逃げられるぞ」
「……よし、じゃあ俺達だけでいい。ヒビキ達はメイアのそばにいてやってくれ。」
「里中君!」
アイリスが端末を耳に当てながら言ってきた。
「ナデシコにトレースを頼んだけど、向こうもそれどころじゃないみたい!」
「まさか……アイツらか!?」
「くっ……地球の連中、しつこいったらありゃあしねぇ。」
「戻る?」
ジュラが言う。
「いや、必要ない。優秀な連中が残ってるんだろ?向こうには」
「問題児だがな……」
メイアの皮肉に、皮肉で帰す俺。
「あんたのほうが問題児でしょうが」
サリナが突っ込んだ。
拾壱
「全艦戦闘配備!」
ナデシコのブリッジにブザムの声が響く。ナデシコの全権をマグノ達に任せてあるため、戦闘指揮も彼女らのやり方になる。
「パルフェ!ニル・ヴァーナのシールドは使えるか?」
呼びかけに、ウィンドウが開くとニル・ヴァーナの中で作業をしているパルフェが映った。
『無理です。ウィルスの除去がまだ終わっていません。不眠不休で作業していますけど、最低でも後5時間は……』
「ナデシコのシールドを展開!ニル・ヴァーナもろとも包み込むんだ」
パルフェとの通信をきると、ブザムはクルーに発令する。
変わって地球側の戦力。ピロシキ型母艦が2隻。キューブは百機近くになるだろう。
だが、今回は別の連中も混じっていた。キューブ型の影から出てきた十数機の人型のマシン。
「あれは!?」
すぐに画面が拡大され、映像が送信されてくる。
「まさか……あいつは」
マグノがつぶやいた。
ヴァンガードタイプだが、蛮型よりは大きい。特徴的な角ばったフォルムから察するに、
「分析終了!RGM−79を模造したものと思われます!」
ナデシコクルーが叫んだ。
「モビルスーツまで……」
「ドレッド隊展開しました!」
「MS隊展開しました。エステバリス2機が戦線に参加します!」
「サイバリア、展開します!」
「浜崎より全機へ!どうやらジムをまねた奴が現れたらしい。だが、機械は機械だ!格の違いを見せてやれ!」
『了解!!』
しかし、戦闘が始まってまもなく異変が起きた。ジムを模造したと思われる機体がいきなり動かなくなってしまったのだ。
好機とばかりにオリジナルのジム隊が偽ジムを破壊して回る。
なぜ偽MSが動かなくなったのか。多分、動力系統に伝達系統が耐えられなくなりオーバーヒート状態になったためであろう。
フッ、ただ真似ればいいというものではないのだよ。
だが、安心してはいられない。キューブタイプはいつものように防衛ラインを突破するとナデシコとニル・ヴァーナに攻撃を仕掛けてきた。
だが、
「キューブタイプ、本艦に攻撃を開始!バリア出力75%を維持」
「すごい……、ぜんぜんびくともしない」
そう。ニル・ヴァーナのシールドと違ってこちらの使っているのは桁違いに高性能を誇っている。
「敵母艦接近!主砲の射程距離まで後10セク!」
「偽MS全機撃破を確認!」
「主砲射程距離まで後5セク!」
「全機を主砲の射程から出るように言っておくれ」
「……お頭!?」
艦長席のマグノが言った命令に対してブザムが驚きで返した。
「使うおつもりですか!?」
「せっかく、自由に使ってくれと言われたんだ。使わなきゃ損じゃないか」
その言葉は楽しそうである。
ブザムは呆れながらも発令した。
「主砲発射準備!全機射程より離脱せよ!」
「グラビティブラスト、エネルギー充填を開始します!」
ナデシコのクルーが報告する。
「ジェネレーター出力、上昇を開始。エネルギー転換開始。魔法変換システム作動します」
「ジェネレーター出力臨界まで10セク!」
「耐震装置作動。」
「ターゲットを敵母艦にセット!ジェネレーター出力120%、臨界へ到達!」
「エネルギー変換終了!グラビティブラスト発射準備完了!」
すると、アマローネの座っていた座席の前から銃のトリガーがせり出てきた。アマローネの座席はブリッジの正面下方にあったのだ。
同時に艦が変形し前が開くとそこにエネルギーが収束する。
「えっ!あたし!?」
「まだ撃つな!」
ブザムが制する。アマローネはトリガーを握ると、次の命令を待った。
「敵母艦、距離2500まで接近!」
「右舷スラスター開放。母艦が重なるように移動せよ」
すぐにスラスターが開放され、ナデシコが左に微妙に移動する。そして、ピロシキ母艦が重なった。
「主砲発射!」
「発射します!」
アマローネは一気にトリガーを引く。
――ズオォォォォォォ!!
エネルギーが解放され、主砲はタイミングバッチリで母艦2隻を葬った。
「目標反応喪失!撃沈!!」
「しっかし、実際に撃ってみると寒気がするね」
「そうですね。おいそれとは使わないほうが」
ピロシキ型を何の苦も無く撃沈した主砲にマグノ達は改めていやなものを感じたのだ。
「全機、帰還せよ!」
『了解!』
「地上部隊より連絡。シャトルを奪取されたとのことです!トレースをしてほしいと」
戦闘が終わったので通常回線を受信したオペレーターが言った。
「おやまぁ……らしくないね」
「地上のスキャンを開始。シャトルを見つけるんだ」
「OK!今スキャンしてるって」
「ったくあのガキども、手間かけさせやがって」
俺達はもう一機のシャトルで追っていた。どうやら町のほうへと逃げたようだ。とりあえず町へと降りることにした。
「…………」
「ここって……地球じゃないよね」
「そのはずだけど」
そう、その町は20世紀の佇まいをそのまま切り取ってきたかのようにあった。自動車が走り回り、まだまだ町を広げようという気か、工事用車輌も行き来している。
服装までも20世紀からの服装だ。
と、通信が入ってきた。
『こちらトキオ管制塔。シャトルのパイロットに告ぐ、着陸は町の北の発着場にて。誘導する』
「了解。許可を感謝する。」
答えたものの、目的はもう一機のシャトルだ。しかも、俺達の装備が残されているのだ!のんびり観光などしていられないのだが……。
発着場についてびっくり、シャトルが無造作に置かれていた。
「ああ!?なんでここに!」
「そんなことより荷物だよ荷物」
シャトルの横に着陸させると、誘導員にもう一機の搭乗者のことを尋ねた。
「あぁ、子供が乗ってたよ。しかも巷じゃ噂のガキどもがね。しかし、シャトルまで操縦できるとは……って君達!?」
俺らは最後まで聞かずに銃器を抜くと、シャトルの入り口に向ける。
アイリスがすばやく取り付くと突入した。
「……くそー、逃げたか」
言いながら出てきた。それを聞いて俺達も銃をしまうと中へ。中は相当荒らされていた。大した物が入っていたわけではないが、銃器関係が数品置かれていた。それがごっそり無くなっている。
「やられた」
一様に落ち込んでいると係員が来て、
「何事ですか!?」
係員に経緯を説明すると、
「分かりました。銃器が持っていかれたというなら手配しましょう。
……ところで、銃の使用許可証は持っていますね?」
『えっ?』
サリナ、アイリス、マリーが声を上げた。そりゃそうだ。今の今まで銃を使うのに許可証が必要になったことなど無いのだから。しかし、ここに来て許可証を見せろとは。
俺はポケットから4枚のカードを出すと係員に渡した。
「えぇ〜と、あ、軍関係の方ですか!?すいませんわかりました」
いきなり頭を下げ、カードを返す係員。訳の判らない3人にカードを渡し、
「前に使ってた軍の階級証だ。お前ら忘れていったろ前に」
『あっ!!』
思い出す2人。
「何? 何の話?」
判らないアイリス。
アイリスが仲間になる少し前、どうしても階級証が必要になり、「天使」が作って持ってきたものなのだ。もちろん正規のものだ。ここで使えるとは思っていなかったが。
乗っている船もある意味では軍艦なので嘘ではない。(か?)
軍からの要請というはからいで手配はすぐに通され、俺達は町に入ることができた。
服装が服装なので目立つことは無く、ごく自然に調査が行えたのは幸運だ。
『どうだ?そちらの状況は』
メイアが通信してきた。
「シャトルはあったけど。中にあった銃器類が全部持っていかれたわ」
『何!?本当か?』
「んとに近頃の子供は……」
お前もまだ子供の範疇だろサリナ。
『我々もそちらに行く。シャトルで迎えに来れるか?』
「OK。大介、どうする?」
「よし、マリー。まかせる。行ってきてくれ」
「かしこまりました。行ってまいります」
言ってマリーは発着場へと走っていった。
―To be continued―