ー二人の天使ー

 

                                          サリナサイド

 

 

5・剣と魔法と狩人と

 

 ロックはサリナたちの戦いを見ながら、くんずほぐれつの決闘になるだろうと思っていた。

 しかし、実際は、

「せぇぇい!!」

「くっ!?」

 ガキィィィン!!

 サリナの繰り出したサイズ(大鎌)はローランドの剣によって切り払われる。

 受けられたと知ると、サリナは身を引いてサイズを消して、バスタードソードにする。

 そう、

 サリナは、自分の魔力と自由自在に形を変えるスティックを駆使した戦いでローランドを押していたのだ。

 ソード、バスタードソード、グレートソード、ワイヤーソード・・・・・・。

 バトルスティック、ヌンチャク、三節スティック、他節スティック・・・・・・・。

 サイズ、S字刀、槍、薙刀、鉄槌からトンファー、独自の鎖鎌まで。

 およそこの世に存在する近接戦闘武器と名のつくものすべてにスティック、光刃を変化させ、それぞれバラバラな攻撃を繰り出していた。

 これでたまらないのがローランドだ。

 ヴァンパイア相手に慣らしてきた腕を持っても、いきなり形を変えて襲ってくる数々の武器とスピードについて行けなくなっている。

 さらに、魔法だ。土、火、水、風の四大属性を始めとし、光までも操りそれを威嚇、波動、収束、分散と、これまた多種多様の攻撃を放っているのも、ローランドが押されている原因だ。

 ――要するに、非常識なまでの戦闘能力なのである。

(この女、・・・・一体何者なのだ!?)

 ローランドは戦いながらそう思った。

 ローランドの戦い方はとにかく、サリナの魔力を最小限まで削ることしかできなかった。

(私が押されるとは・・・・・もしや、ヘイルイースでこいつに勝てるものなどいないのでは・・・)

「四式!!・・・・」

 サリナが間合いをつめスティックを振り上げる。

 とたんに光刃が変化して巨大なハンマーへと姿を変えた。

 そして空中へととび、そのままローランドへと向かう。

「これで終わりよ!!!」

「・・・・・・・彼方へ!」

 サリナが攻撃を放つ一瞬前、ローランドは転移呪文で逃げた。

「(四式・鉄槌改)・・・破神鎚!!」

ドガァァァァ・・・・・・!!!

 巨大な質量と似合った攻撃力を持ったハンマーは大地へと突き刺さる。

 そして、半径2メ−トルばかりを吹き飛ばした!

 吹き飛んだ土くれは転移して安全圏に逃げたはずのローランドも巻き込んだ。

 

 

「・・・・負けだよ。私の」

 手合わせ(?)の後、ローランドは負けを認めた。

 荒野になりかけた広場を離れ、彼の私室で話している。今広場では人を呼んで修復作業が行われている。

「すいません。・・・・熱くなっちゃって」

 サリナも頭をかきつつ話す。

「しかし、聞きたいことが山のようにある。」

 ローランドはサリナをにらんだ・・・・・が、

「・・・・しかし、戦いぶりを見て思ったがどうやら訳ありのようなのであえて聞かん」

「すいません」

『・・・・・・・・・・・・・』

 ロックはいまだに唖然とした表情。アレックスは平静を保っているように思えるが、額にかいた汗と、時々ひくつく眉が彼の精神状態を物語っている。

「提案がある。」

 ローランドがいきなり切り出した。

「この国で騎士をやる気は無いか?あんたなら即仕官決定なんだが・・・・」

「それはお断りします」

 きっぱりとサリナは断った。

「だろうな・・・・・」

「お、おい、王直々に頼んでるんだ受けろよ」

 声が上ずっているロックである。

「パスね。ここに仲間がいるかもしれないし、のんきに軍隊指揮なんてしてられないわ。」

『仲間がいるのか!?』

 ローランドとアレックスのこえがハモった。

「ええ。たぶんね」

「・・・・・・・・・たぶん、て」

「ま、そのへんは忘れてください。

 てわけで、あたしはこの辺でおいとまさせていただきたいのですが、いいですか?」

「待て。もう一つ頼みと言うか・・・・あるのだ」

「なんです?」

「今日ロックとヴァンパイアバーを破壊したそうじゃないか。」

「しちゃいましたね。酒場は」

「まぁ、その件については逆にありがたいことなのだが、それに加えてだ。

 我々は民をヴァンパイアから守ることを第一目的として、軍隊を使っている。

 ロックたちも方々で活躍してもらっているが、そこでだ。

 君に旅をしながらでいい、ヴァンパイア掃討の手助けをしていただきたいのだ。」

「陛下!?それは・・・・・」

 アレックスがあわてた。一般人にヴァンパイア討伐の手助けなど求めると軍隊の威信にかかわるのだ。

「なに、かまいはせんよ。それにこのものの戦いは見ただろう?

 あれはもう人間技ではない。我々に、いや、我々以上の実力を持っていると私は認めるが・・・・?」

「・・・・・・・・判りました」

 王の言ったこと、それは国最強であるソードマスターさえも凌駕する実力を持っていると彼が認めたと言うことだ。

 そして、アレックスも見ていただけでサリナの実力はわかった。

「第五のソードマスター誕生・・・・・ってことですか?」

 ロックが聞いた。

「非公式ながらそうなるだろう。かの戦いは皆が見ていた。」

「・・・・・ちぃぃ、俺も後39匹って所まで来たのに・・・・」

 そっちの方の焦りか!!

「・・・まぁ、別に襲ってくる奴は倒しますけど」

「・・・・すまぬな。それでは荷物は返そう。後方々の詰め所に使いを出す。

 お主の狩りを邪魔せぬようにな」

「・・・・はは、狩りですか」

 ヴァンパイアを狩るヴァンパイアハンターとでも言いたいのだろうか。

 

 

 さて、城を後にしたサリナだが・・・・・・、なぜか方々からの視線が痛い。

 それもそのはず、城での一件はすでに騎士たちによって広められていたのだ。

『謎の少女。ソードマスターローランド国王を負かす!』てなぐあいに。

 人のうわさは早いものである。

 早いうちに宿舎に入ってゆっくりしようと思ったが、この様子ではゆっくりとはできそうも無い。

 ダッ!っとサリナは走り出した。町の外へ向かって。少しほとぼりを冷まそうというのと、散歩と言う意味で。

 

 

 

 ―To be continued―

 

 

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