Go Back In The Time
    −認めたくない世界−






 *辛気臭い前書き
 
 私がこの世界に来て早半年が過ぎてきた。
 長い、……そして過酷で、楽しい旅が続いてきた。
 私が望んで仲間に加えてもらった人たちは今、別のワールドでおんなじように冒険をしていることだろう。
 仲間……、かけがえのないもの。大切なもの。
 そんな人たちに囲まれて退屈な日は皆無だった。
 助け合い、いつでも一緒にいて、裏切りの無い――喧嘩はしたけどね――、仲間。
 …………、辛気臭くなっちゃったな。
 じゃ、これから私、サリナ・ハイランドが、一人旅の記録をここで語っていこうと思います。
 え?他の仲間の解説をしろ?
 悪いけど、勘弁して、ね。
 てなわけで――逃げたな――、行ってみましょう。
 
 
 1:行ってみましょう一人旅
 
 私の生まれは、ゼフィーリア。
 どこぞの、「悪人に人権は無い」少女と同じなのだ。
 けど、彼女を悪く言わないように、尊敬してんだから。
 そのゼフィーリアのとある町で私は生まれた。
 魔道士になるために、小さいころから修行したし、訓練もこなした。
 そして、卒業て一人旅をして、実力を試そうと挑んだ三人組。その三人組と他数名が私の仲間。今は各ステージ……、ステージなのか国なのか……、 まぁ、いいや。
 彼らは「夢の力」を持ってた。強大な力。でも、それを実感してないのか、抑えてるのかは判らなかった。
 「夢」、一口に夢と言っても十人十色だと思う。
 夢の中では何でもかない、そうだと信じることで、それが実体化する。
 そんな力。間違えばこの世界を丸ごと吹っ飛ばせるだろうその力。
 彼らと同行を決めたとき、私もそれを授かった。
 「天使」と名乗る変な人から、彼らも授かったそうだ。
 しかも、半強制的にらしい。
 どうやらこの「天使」。何か企んでる気がする。
 しかし、そんな考えは、すぐに消えた。彼らとの生活がそんな考えを忘れさせた。
 言っとくけど、恋愛物じゃないからね。
 この、一人旅今回で二回目。
 さて、そろそろ、本題に入りましょう。
 
 


 シュ ウゥゥゥゥゥ……
 
 蒸気を吐くかのような、音がやんで、私は新たな世界へ来た。

「さて、いきましょうか」

 気ままが一人旅のセオリー、てことで、ワープアウトした森の街道をプラプラと。
 私のいでたちは、黒コートに、シャツ、Gパン。腰の後ろに二丁のUZI。それと、伸縮自在のバトルスティック。この棒、ビールサーベルや、レーザーガ ン。果ては、ぬんちゃくや、三節棍と、いろんなことができるもの。私が作ったのだ。エヘン。
 UZIマシンガンは、前に行った科学世界から学んで作ったもの。魔力の弾を使うので、弾数は無限。
 さらにコートも、防弾・防魔、と手作り。
 今考えたら、何でもありな気が……。忘れよう。
 さて、そんな私が街道を歩いてしばし、

「キャァァァァ!」

 何やら女の人の悲鳴が!
 ふと見れば、街道の向こう、何やら動く影が、
 私は、すぐに走り出した。
 

 /// ///


 女は逃げる。目深にかぶったフードの中で、恐怖の表情を浮かべて、
 後ろからは、レッサー・デーモンと名のつく、亜魔族が二匹女の後を追っていた。
 ゴアァァァ!
 雄たけびと共に、デーモンの周りに炎の矢が、出現した。
 
 ヒュドドドドド!!
 
  一直線に女に降り注いだが、
 ヒュッと、女が先に跳んでかわしていた。

「烈閃槍!」

 女が振り向き、呪文を一発解き放つ!
 しかし、

 ズドッ!

 一体に直撃し、倒れたものの、デーモンは起き上がりさらに追ってくる。

「クソ。なんて体してるんだろ!?」

 烈閃槍――これは精神そのものにダメージを与えるもので、精神生命体の魔族に効果は絶大なのだが、それがきかない。
 効かないならどうする。格闘戦は苦手だ。
 逃げるしか、ない。
 しかし、疲れを知らないように襲ってくるレッサー・デーモン。
 そして、

 がっ!

「あっ!」

 地面につまずき、転んでしまった。
 そこに、襲い来るデーモン!

「キャァァァァ!」

 絶叫を上げ、目を閉じたとき……、
 
 ザンッ!

 肉を絶つ音。
 しかし、肉を絶たれたのはデーモンのほうだった。

「…………?」

 恐る恐る、目を開ける彼女。
 目の前には、光る刃を生む剣を持ったサリナがいた。
 
「え……」
「話しは後よ!今はこいつらを!」

 サリナは剣を構え直し、デーモンを凝視する。
 残りは、3体、……いや、もう2体、茂みに隠れている。
 デーモンは、目の前で仲間を惨殺されて浮き足立っていたが、

「ガァァァァ!」

 向かってきた。

「危ない!!」

 女が叫んだ。
 しかし、サリナは落ち着き払い、

「我流殺人、七式……!」

 その瞬間、サリナの姿が消えた!
 
 ジャジャジャン!
 
 鋭い音。サリナが、デーモンの後ろに現れた。
 一瞬、時間が止まったように思えた。

「……薔薇狩り」
 
 ブジャァァ!
 
「!!」

 3体のデーモンから、鮮血が吹きあがる。薔薇のように。
 そして、亜魔族の末路に従い、塵となり消えていく。

「……」

 呆然とする彼女。
 サリナは、彼女に近づき、

「ふう、大丈夫だった?」

 と、

『ガアアァァァァ!!』

 隠れていたもうニ体が出てきた!

「え……!?」

 しかし!

 ジャ、どごっ!

 手を振る上げる前にバトルスティックが伸び、2体同時にデーモンの腹に突き立った!

「二式!」

 短い声、そして。

 ドウゥッ!

 両方の先端から、キャノンが火を吹き、2体を屠る。

「ったく、手間取らせる。ねえ大丈夫……じゃないわね」

 今のにはさすがに耐えられなかったのだろう。失神してしまった彼女。
 



「うう、うん……」

 目を覚ました、彼女。
 うっすら目を開け……、
 ガバァ、っと跳ね起きた。

「こ……ここは……」
「起きた?」

 サリナが声をかけた。

「!……あなたは……」
「わたしはサリナ。サリナ=ハイランド。
 一体どうしたの?デーモンに追われたりなんかして」

「それは……」        

 と、このとき彼女は重大な事に気がついた。

「あ!私、フード!」
「フード?何言ってんの、邪魔だから取ったわ」
「じゃ、……じゃ、私の正体……」
「エルフでしょ。それがどうかしたの?」

 そう、彼女はエルフだった。
 長い耳。白い肌。
 人間の女性には、恨めしいほどのものだ。まあ、それはどうでもいいとして。

「え、あの……」
「どうかした?」
「殺さない……んですか?」
「…………は?」

 いきなり面食らうことを言う彼女。

「何言うの……。いきなり」
「え……だって、人間はエルフを狩ってるんでしょ……」
「!?……ちょっと、どういうことそれ?」
 
 エルフと人間。今は、まだ、平和に暮らしているが、人間で言ってかなり昔の事。
 人間がエルフを虐げていた時期があった。
 エルフたちの、長寿の秘密、美しさの秘密。
 それを探らんがために、多くのエルフが襲われ、バラバラにされ、殺された。
 そのときは、国を上げて賞金制をとった国もあったほどだ。
 エルフは数を激減させ、隠れ住んだ。
 しかし、人間はエルフを探し出し、捕らえていった。
  不老不死という、不可能な領域に入らんがため……。
 人間の、五、六倍の寿命を持つエルフから見れば、その出来事はつい最近のことでしかなく、人間への嫌悪感は強い。
  ここでは、それを暗黒時代と呼ばせてもらおう。
 
「…………なんてこと」

 サリナは椅子に座り込んだ。
 まさか、はるか過去にスリップしてこようとは、思っても見なかった。
 そういえば、この街の中で、エルフを多く見た。
 しかし、まがりなりにも幸せそうな顔をしていたとは、今考えると到底思えなかった。 
――どうしよう ……これから。
 そんなサリナを、見た彼女は、

「あなたは、やさしいんですね」
「へ……?」

 サリナは彼女を見た。

「私なんかを助けてくれて」
「当然よ。同じ生きるものとしてね」
「同じ、生きるもの……」

 今度は、彼女が面食らった顔をしている。

「そうよ。
 言っとくけど、私は、エルフ狩りには反対だわ」

 ――エルフが築いた生活を破壊した時代。私はごめんよ。
 そのとき、
 廊下に気配を感じた。数人はいるだろう。

「……」

 サリナは、ドアに近づき、聞き耳を立てる。
 すぐに、取って返すと彼女に、

「動ける?」
「え?……どうしたんですか?」
「どうやら、賛成派が来たみたいなの」

 サリナは、銃を身につけた。
 
「フリーズ・ブリッド!」

 ヒュギィィン!

 魔法でドアごと凍らせて、サリナ達は窓を開ける。

 ドンドン!

 すぐにドアをたたく音。

「行くわよ。え〜と……」
「あ、私、ラミアって言います。ラミア=レンフォード」
「んじゃ、行くわよ。ラミア!」
「ハイ!」
 
 ドガアアァァン!!
 
 爆破された、ドアを背に、二人は窓を飛び降りる。

 ダン!

 なんとか、無事に着地したのもつかの間、

「いたぞ!逃がすな。殺せ!」
「女がいるぞ。仲間だ!」

 おお、いるいる。狩人が……。

「走って」
「はい!」

 ラミアの手を引いて、走り出すサリナ。
 と、目の前に、一人の男が立ちはだかる。

「ほう、貴様エルフをかばうのか?」

 剣を抜く男に、サリナは、

「あんたみたいのと、違ってね」

 サリナは銃を抜き、
 
 ダダダダダダ……!!
 
 問答無用で、十発近く見舞った!

「が……」

 たまらず、倒れる男。
 しかしこの銃、殺さずに精神にダメージを与える事ができるものなのだ。
 烈閃槍を、連発にしたもんだと思ってくれればいいだろう。
 倒れた男を踏み越え、走る二人。
 すでに、数人の追っ手がいる。

「くそう。めんどくさいわね。ラミア?飛べる?」
「え?いえ、飛行術はちょっと」
「しゃーない、……」

 サリナは、呪文を唱え、

「レイ・ウィング!」

 二人を風が覆う、そして、

 グオ……!

 一気に、空に飛び立った。
 
 


 2:決意
 
 
 逃げ延びたサリナ達だが、この後も安全に進むとは思えなかった。
 ラミアは全面的に協力をしてくれるそうだ。
 とりあえず、近くのエルフの里に行って、そこで対策を立てようとあたしは考えた。
 運良くラミアが知っている隠れ里があると言うのでついていくことに。
 
 その道すがら、二人の行く先からなにやらやってくる。

「何か来ますね」
「ええ。見つかるのは避けたいわ。隠れましょ」

 森の茂みに身を隠していると、その一行はやってきた。

『!!』

 その一行は、エルフを連れた賞金稼ぎの一行だった。
 6人ぐらい、縛られて行進させられている。それを5人ほどの賞金稼ぎが連れているのだ。

「やれやれ、今回もいいのが獲れたな」
「ああ。これならかなり高く売れるな」

 などと人情のかけらも無いことを話している。

「……どうします?」

 ラミアの問いに、

「どうするですって?決まってるでしょ……!」

 ガサッ!

 サリナは一気にしげみから出て、一行の前をふさいだ。

「待ちなさい!!そこの連中!」
「な、なんだ!?」
「……なんか用かい?姉ちゃん」
「ええ。今すぐ、彼らを解放してもらうわ」

 と、スティックを引き抜く。

「は!?冗談だろ。こいつらは俺らの金ずるだ。横取りかい?」
「さーね、どうかしら」
 
 ブウィン!
 
 スティックの先端からブレードが伸びる。
 これも、状況によって、精神攻撃、直接攻撃とを切り替えることができる。

「な、なんだ!!?」
「覚悟しなさい!」

 あたしはまず、手近な一人に剣を振る。それを受けようと剣をかざす男だが、それは質の違う剣だからして、   

 ギン!ズバァ!

 まともに剣を切り飛ばして精神攻撃を入れる!
 あっけにとられるうちにもう一人。

「こ……こいつ!」

 一人が、斬りかかって行くが、簡単に避けられ一撃をくらう。
 ここで戦威喪失しない奴はいない。

「た、た、助けてくれぇぇぇ!!」

 一人が、逃げを取った!
 しかし、その前にラミアが立ちはだかった。

「烈閃槍!」

 ズバァァァ!

「ガ……」

 まともにくらって失神する。
  エルフ版のこれなら、3、4日は寝ているだろう。
  そして、残った一人は、

「た、頼む!命だけは……」

 しかし、あたしは剣を振りかざし、

「やめ……!」

 ザン!

 切り倒した。
 無論殺したわけではないが……。

「大丈夫?」

 エルフたちの縄を切りながら聞く。 

「…………礼はいわんぞ」

 年長の男がそっけなく言った。

「いいわよ。別に」

 元々我ら人間が元凶になっているのだ。あたしを見て嫌悪を抱く人がいても何ら不思議ではない。

「で、あんた、なんで人間なんかと歩いてるんだ」

 後ろのラミアに言うエルフの一人。

「え、あたしも命を救われたんです。それで、ご恩のつもりで協力を……」
「やめとけやめとけ……」
「どうせ利用されて殺されるのがおちだぞ」
「こんな人間なんか……」

 口々に批判と罵倒の声、

「ちょっと、あなたがたあたしの恩人になんてこと……!」
「いいのよ。ラミア」

 あたしはラミアをさえぎり、

「いまさら、何を言ってもあたし達人間は悪者なのよ。きにしなくていいわ」
「で、あんたはなにやってるんだ?まさか、恩売りかい?」

 ピク……。

「終わらせるのよ。こんな腐った時代をね」
「たった一人でか」

 あきらかな侮蔑の声、
 あたしは近くの大木に歩み寄り、

 シャッ!!

 右手を縦に一閃!
 ……何も起こらないと思いきや!
 
 ズバァァァン!!
 
 いきなり、大木が縦に、裂けた!
 
 バギバキバキバキ……! ズゥゥゥゥン!
 
………………………………………………
 
「そう、一人でもやるわ……」
 そう言って歩き去りざま、

「……たとえ、国一つ潰してでも、世界中の人間を敵に回してもね」

―――!―――

 その言葉と共に発せられた殺気は、エルフ達に冗談じゃない事を物語っていた。
 
 
 
―To be continued―

 
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