Go Back In The Time
                  −認めたくない世界−



4・上陸

 ボートを桟橋に近づけ るにつれ、だんだんと桟橋にいた人のシルエットがはっきり してきた。
 2人。エルフだ。
 ボートを桟橋に寄せ る。ラミアがロープを二人に向かって投げる。
 2人はロープを引き、 船を桟橋に密着させ、くいに結ぶ。
 まず、ラミアが桟橋に 上がり、次にあたしが上がった。

「兄さん!」

「ラミア!」

 ラミアは一方のエルフ に抱きついていった。


 ――兄さん!?


「よく無事だった。心配 したんだぞ」

「ごめんなさい。でも、 あたしも子供じゃないのよ」
「……そうか。それ で……そっちの方は?」

 と、あたしの方を見 る。


「ああ、危ないところを 助けてもらった、サリナさんよ。
訳あってつれてきた の」

 あたしは彼に会釈し た。

「そうですか。ありがと うございます。

 ようこそ、我らが『調 和の島』へ」 

 と、彼はあたしの手を 取ると、握った。

 おやぁ?エルフは人間 にこうまで友好的だったか?
 しばらくして、あたし たちはエルフの村へと案内された。

「『調和の島』の意味が わかったわ」

 あたしは村について、 村の様子を見るなりそう言った。

 人間とエルフの共存。
 今にしてみれば、共存 など夢物語と化しているが、昔は確かに共存していた村が あったらしい。
 村ではエルフと人間 が、笑い、楽しみ、泣き、 喜び合いまったくの平和だった。
 人間とエルフの愛の子 ハーフエルフの姿も見られる。

「そうです。人間との共 存を得た島。それがこの『調和の島』なんです。
さぁ、長老のところへ 案内しましょう」

 あたし達は、一軒の大 きな家へと案内され通された。

「ようこそいらしゃっ た。ささ、どうぞ腰掛けてください」


 中からかけられた声は かなり老人ぽかった。

 実際に中に入ると、4 人ほどの長老たちが席を囲んでいる。むろん、人間の長老も いる。
 あたしは長老たちと向 かい合う形で、席に座る。
 ラミアの兄が、長老に エルフ語でなにやら話している。実際のところエルフ語も 知っているので何を言っているのかは分かる。

「いやあ、すみませんで したね。危ないところを助けていただいたそうで……」


 壮年のエルフが話し掛 けてきた。400歳は行っているだろう。


「いえ……、たいしたこ とじゃ」

「大した事ですよ!だっ て……!!」

 ラミアがいきなり立ち 上がると、助けたときのこと、捕虜の奪還、船のボートチェ イスのことを、少々の誇張を含んで話し始めた。


「……というわけなんで す」


 長老たちは、『お お……』と感嘆しながら聞いていた。


「いや、……ほんとにた いした事じゃないんですが」


 と、謙遜を重ね、エル フの長老から武勇伝を聞かせてくれと、聞かれたときに、そ れは来た。


 ゴ グァァァァァァァ!!


 爆音とともに衝撃が来 た。


「何事!?」


 慌ててあたしとラミ ア、その兄は外へと飛び出した。

 外では同じようにパ ニックが起こり、皆が逃げ惑っている。と、一方から妙に聞き なれた音がした。
 続いて爆音。家が一軒 吹き飛んだ!

「ロケットラン チャー!?」


 あたしは急いで音のし た村のはずれに走った。後ろから二人も追ってくる。


「ハハハハ……!!」   

 海賊の親分は笑いが止 まらなかった。

 先ほどサリナがラン チャーで粉みじんにした海賊船の船長だ。
 緊急用ボートでなんと か無事だったもののやはり何人かの部下を失った。
 復讐に燃えて、ボート の後を追う途中波間に妙なものを見つけたのだ。そう、ラミ アが操縦を誤ってサリナが落としてしまった2台のランチャーが浮いていたのだ。
 どうして5キロもある ランチャーが浮くかと言うと、サリナが魔法を付加させ軽量 化したからだ。
 思わぬ拾い物とそれを 拾い上げて、えっちら漕ぐうちにこの島を見つけたのだ。
 ランチャーの使い方 は、サリナが撃つ瞬間を見たものがいた為にばれていた。
 ……まぁそういうわけ で、村を見つけた連中は意気揚々と強奪へと走ったわけだ。
 と、

 ドドドドドド……!!


 いきなり無数の炎の矢 が撃ちこまれ、十数人が直撃を受け倒れた。さらに煙幕まで 立ち込める。


「な、なんだ!?」


 うろたえる海賊たち。

 そして、今度は太刀音 とともに仲間の上げる悲鳴。
 煙幕の中、何が起こっ ているのかわからず、ただ立ち尽くす以外に何もできなかっ た。
 やがて、煙幕が晴れと んでもない光景が目に入ってきた!

「運が悪かったわね。あ たしがいるときに襲撃なんてして」


 サリナである。

 しかもその手には青く 光る光剣を発するバトルスティックがあった。
 そして、サリナの周囲 には累々と横たわる海賊たちの姿が……。
 残っているのは頭領 と、その後ろにいたランチャーを持った二人のみ。

「あきらめて消えなさ い。仲間は殺してないから連れて行きなさいよ」


 サリナは光剣を構えな おす。


「サリナさん!」


 後ろからラミアの声が 上がる。


「何とか全員無事です。 亡くなった人もいません!」


 それを聞いてサリナは 安堵の表情を浮かべる。


「さぁ、早く決めなさ い。でないと、今度は本気で殺すわよ」


 青い光剣が波打って、 今度は赤くなり始めた。血のように赤い真紅。


「はっ!何言ってやが る。こんなことをされておめおめと帰れるか!
 やっちまえ!」

 頭領は後ろの二人に指 示を出す。

 二人はランチャーを構 えた。スコープを見ることはしない。目検討で照準を合わせ る。
 と、サリナがポケット からあるものを出した。
 ジッポライターのよう な形をしている。ふたを開いて、

 ピッ!


 とたんに、ランチャー から電子音が響いてきた。


「な、なんだ!?」

「引き金が……、引けな い!?」

 ランチャーの安全装置 である。

 遠隔操作で安全装置を かけることができるものがいくつかあるのだ。
 そして、こうなるとラ ンチャーは重荷でしかなくなる。

 ドンドン!! 


 次にUGIが火を吹 き、二人は倒れる。


「な……、そんな馬鹿 な……」


 ビジュッ!! 


 光剣から放った光弾が 頭領の目の前に穴をうがった。


「さぁ、観念すること ね。でないと今度は当てる」

「わ、分かった。分かっ たからやめてくれぇぇ!」

 サリナはにっと笑うと UZIを問答無用で撃ち込んだ。

 倒れる頭領。そして、 これで海賊団は全滅したことになる。
 
 数時間後サリナは元来 た桟橋にいた。

「申し訳ありませんでし た。あたしが来たことでご迷惑がかかって……」

「うむ、まぁ死傷者が出 なかっただけ拾い物だった」
「・・・・・・それじゃ これで」

 あたしはボートに乗り 込む。そういえばラミアが見送りに来ていない。

 例の海賊はあの後、記 憶を操作してこの島のことを忘れさせ、漂流させた。もう来 ることもないだろう。
 あたしはボートを発進 させた。
 遠ざかる、小島。平和 を愛する島が遠くなる。

 ――人間の未来みた い。


 などと不謹慎なことを 考える。

 中速に固定してあたし は船室に入る。と、

「あ、サリナ。もらって るよ」


 ズガ シャァァァァァァ!!


 船室にはちゃっかり ジュースを飲んでくつろいでいるラミアがいた。


「なな、なにしてん の!?あんた!」

「何って、決まってるで しょ」

 ジュースをテーブルに おいて、


「この国を終わらせる。 この不平等な世界も」

「・・・・・・・・・・・・・・」
「力貸してくれるわよ ね」

 と彼女は、手を差し出 してくる。


「・・・・・・逆よ。あ たしが頼みたいくらいだもの」


 あたしはその手を握り 返す。


「そんじゃよろしくね」

「ええ。この国を終わら せるまでね」

 ラミアは笑ってまた ジュースを飲み始める。

 あたしは甲板に出て、 見えてきた本島を見つめていた。

 過去を変える。そ うなると・・・・みんなは、あたしはどうなるんだろう。


 そんな一抹の不安が あった。

 しかし、かえると決意 した時点で未来は変わっているはず。なら、やらなければあ たしのいた世界はない。
 そう思い返して、決意 を新たにした。
 

    サリナ=ハイランド
    世界:暗黒時代
    目的:世界を平等の国へ



    −TO BE CONTINUED−


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寸あとがき

 今回は比較的短くなっ てしまいましたね。まぁ、さらに加えるなると専門用語をビシ バシ使わないといけないので却下するしかないのです。
 さて、今回は比較的長 いシリーズになりそうな様子を呈してきた「認めたくない世 界」ですが、たぶん長々とはやらないと思います。
 なぜなら長編を考えて いるのです。それもかなりの。早々に終わらせてかかりたいと 思っています。(だからと言ってこれを放棄するとはいいません)
 それでは。気が向いた あとがきで  2001年8月9日


2008/11/13 改訂